2011年6月、ウクライナ検察庁は、ユリア・ティモシェンコ前首相を首相時代の越権行為で起訴した。
起訴状によれば、2009年1月19日にロシア・ガスプロムとナフトハス・ウクライナ社間でガス契約が結ばれたが、2日前の1月17日にティモシェンコ前首相とロシアのウラジーミル・プーチン大統領(当時)との会談で事前合意がなされていたという。
そのため、ナフトハス社は不公平な契約と理解しつつも調印を余儀なくされ、結果的にウクライナ経済は損失を受けたとされる。
ウクライナ内では2009年1月に結ばれた価格フォーミュラが高すぎるとの不満があった。しかし、はるか昔の調印劇を持ち出しての政敵の逮捕劇は、その理由、タイミングから、極めて政治色が強いものである。
問題の背景
2005年以降、ウクライナとロシアは、毎年のようにガス供給価格を巡って“戦争”を繰り広げてきた。そのたびに「ヨーロッパ市場価格」が設定されては、政治的な、あるいは仲介業者を介したキックバックによる手心が加えられ、中途半端な値上げにとどまってきた。
根本的な解決策として、2009年1月に価格フォーミュラが設定されたが、リーマン・ショック後の天然ガス・スポット価格の急落により、一時的にウクライナが「ヨーロッパ市場」を上回る価格でロシアガスを購入する事態が生じた。
ロシアのウクライナ向け天然ガス輸出価格
(1000立方メートル当たり、国境渡し)
2006年 | 95ドル | |
2007年 | 130ドル | |
2008年 | 179.5ドル | |
2009年 |
Q1 360ドル Q2 270.95ドル Q3 198ドル Q4 208.5ドル |
2009年1月19日:契約 P=450(0.5×G/935.74+0.5×M/520.93) G:直近9カ月の軽油(gasoil 0.1)の平均価格($/MT) M:直近9カ月の重油(fuel Oil 1.0%S)価格 *2009年度のみ-20%割引 |
2010年 |
Q1 305.4ドル Q2 236ドル Q3 247.3ドル Q4 253ドル |
2010年4月21日条約 (※「ロシアから勝ち取った安いガス、本当の値段は?」) P-100ドル もしくは-30%(330ドル未満の場合) *2019年まで割引適用 |
2011年 |
Q1 264ドル Q2 297ドル |