米書店チェーン最大手のバーンズ&ノーブル(B&N)がタブレット端末の新モデルを発表した。「ヌック(NOOK)HD」と呼ぶ高品位(HD)ディスプレイを搭載する7インチモデルと、「同HD+(プラス)」という9インチモデルの2種類で、いずれもこの秋に米国と英国で発売する。
HD液晶ディスプレイを搭載するタブレット端末は、米アマゾン・ドットコムが「Kindle Fire(キンドルファイア)HD」を9月初旬に発表しており、その7インチモデルを同月14日に出荷したばかり。またアマゾンは同端末の8.9インチモデルも用意しており、そちらは11月20日の出荷開始を予定している。
アマゾンとB&Nの対立構図鮮明に
今回のバーンズ&ノーブルの端末価格はそれぞれ廉価版が199ドルと269ドルとなっており、アマゾンの廉価版199ドルと299ドルを強く意識した価格設定だ。
またバーンズ&ノーブルには、スクリーン照明機能を備えた電子書籍端末「ヌックシンプルタッチ・グローライト(GlowLight)」があるが、アマゾンも同様の機能を持つ「キンドル・ペーパーホワイト(Paperwhite)」を発表して対抗している。
さらに今回バーンズ&ノーブルは、ヌックHDで利用できる映像配信サービスを今秋始めることも明らかにしている。こうして見るとアマゾンとバーンズ&ノーブルの製品、サービスは、コンセプトや顧客層、価格帯が大変よく似ており、両社の対立構図はますます鮮明になっている。
電子書籍の台頭、印刷書籍の販売低迷で経営難に陥っていたバーンズ&ノーブルは、メディアコングロマリットの米リバティメディアや米マイクロソフトから出資を受け、電子書籍事業や海外展開の強化を図っている。今回の新モデルもそうした資金を使って機能強化したと見られ、バーンズ&ノーブルは今後アマゾンの強力なライバルになりそうだ。
そうした中、タブレット市場では米グーグルの端末「ネクサス(Nexus)7」が今年7月に市場投入され、これがよく売れているようだ。
Kindle Fire、Nexus 7 の後塵を拝す
オンライン広告サービスを手がける米チティカが公表した調査結果によると、キンドルファイアシリーズとネクサス7からのネットアクセスの比率はそれぞれ31.4%と68.5%。このうち14日に出荷が始まったファイアHDはまだ3.5%という程度だ。
ファイアHDのシリーズ全体に占める割合は既に11%に達しており、前のモデルと比較すると好調なスタートを切ったと言える。
しかし今の市場環境は前モデルが発売された1年前とは大きく異なっている。「アマゾンがグーグルに対抗するためには、前モデルを大幅に上回る販売台数を達成しなければならない」とチティカは指摘している。