米マイクロソフトは4月30日、米書店チェーン最大手のバーンズ&ノーブル(B&N)の電子書籍事業などに関し、B&Nと資本・業務提携すると発表した。両社は、B&Nの電子書籍事業の企業価値を17億ドルと算出し、マイクロソフトが3億ドルを出資する。これによりマイクロソフトが同事業の株式の17.6%を、残りの82.4%をB&Nが保有する。

特許を巡る訴訟では和解

米バーンズ&ノーブル、新型端末でタブレットPC市場に参入

マイクロソフトと資本・業務提携したバーンズ&ノーブル〔AFPBB News

 また、マイクロソフトとB&Nはこれまで電子書籍端末の特許を巡って争ってきたが、和解したことも明らかにした。

 マイクロソフトは昨年3月、米グーグルのモバイル基本ソフト(OS)「アンドロイド(Android)」を搭載するB&Nの電子書籍端末「ヌック(NOOK)」に特許を侵害されたとして、米国際貿易委員会(ITC)と米ワシントン州の連邦地裁にB&Nと端末メーカーの合計3社を提訴していた。

 発表資料では詳細を明らかにしていないが、米ウォールストリート・ジャーナルによると、マイクロソフトはこれ以外にも電子書籍販売の収益分配で今後3年間、1億8000万ドルをB&Nに支払うことを約束した。また海外展開で5年間に1億2500万ドルを出資することも決めており、同電子書籍事業には総額約6億ドルを投資する計画のようだ。

 B&Nは全米のショッピングモールなどに691店舗、大学内に641店舗の書店を持つ米国最大の書店チェーン。書店ではありながら米カリフォルニア州のパロアルトに研究施設を持ち、電子書籍端末のヌックを開発して、このヌックを中心に電子書籍販売事業を展開している。

 米ブルームバーグの記事によると端末の評判は良い。米アマゾン・ドットコムの「キンドル(Kindle)」よりも使いやすく、女性層を中心に売れているとの高い評価もある。ただ、開発費や宣伝費が膨らんで収益を圧迫しているという状況だ。

評価は高いがコストも高いヌック、分離独立して事業価値明確化

 そうした中、同社は今年1月、電子書籍事業の分離・独立について検討することを明らかにしていた。今回の発表ではその具体的な方策は発表しておらず、同事業を完全に独立させるかどうかについてはまだ検討段階としているのだが、やがては実店舗の書店ビジネスとは分離し、事業価値を明確化する必要が出てくるというのが大方の見方のようだ。

 なお、前週末時点におけるB&Nの時価総額は約8億ドルで、今回算出された電子書籍事業の価値、17億ドルを大きく下回っている(もっともこのニュースが発表された後B&N株は急騰し、時価総額は12億ドルと、電子書籍事業の算出額に迫っている)。