首相・鳩山由紀夫は「普天間失政」の責任を取らず、政権に居座ったままだ。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で、鳩山は公約した「5月末決着」を果たせなかった。自ら潔く引責辞任すべきだったのに、普天間移設の政府方針に反対する社民党党首の消費者担当相・福島瑞穂を罷免。社民党はこれに反発し、連立政権から離脱した。

社民党が連立離脱を決定、福島氏の罷免受け

大臣を罷免された福島瑞穂・社民党党首(参考写真)〔AFPBB News

 鳩山内閣に対する世論の批判は燎原の火のごとく広がり、内閣支持率は軒並み2割を切った。「これでは参院選は戦えない」――。尻に火がついた民主党参院議員は悲鳴を上げている。党内に公然と鳩山退陣論が出始め、幹事長・小沢一郎も「鳩山降ろし」に動く可能性が取りざたされている。参院選が近づく中、政局は一気に緊迫化している。(敬称略)

 2010年5月28日、鳩山政権は米軍普天間飛行場を沖縄県名護市辺野古周辺に移設する政府方針を閣議決定した。日米共同声明に基づくものであり、鳩山は米国との合意を優先して自身が公約した「5月末決着」の体裁だけ整えた。日米合意を優先した理由について鳩山は記者会見で「日米の信頼関係維持が最大の抑止力(になるから)だ」と述べた。

鳩山首相、沖縄県知事に陳謝 普天間移設問題

普天間移設問題、振り出しに〔AFPBB News

 結局、移設先は迷走に迷走を重ねた末、現行計画とほぼ同じ位置に戻ったわけである。2009年9月の政権発足後、今までの8カ月半は一体何だったのか。国家指導者の「お勉強期間」だったのかと考えると、空恐ろしくなる。

 鳩山は昨年の衆院選前の「最低でも県外」という約束を守れず、結果として沖縄の期待を裏切り、失望と怒りに変えてしまった。

 「自分の言葉を守れなかったこと、それ以上に沖縄の皆様方を結果的に傷つけてしまうことになったことに対して心よりお詫びを申し上げる」――。鳩山は記者会見で「お詫び」を連発した。

 しかし、謝って済むものではない。「覆水盆に返らず」――。鳩山は「ちゃぶ台をひっくり返した」とも言われ、今さら現行計画に戻すことは極めて困難である。

「最低でも県外」→「できる限り県外」すり替えた首相

 5月23日、鳩山は沖縄県を訪れて知事の仲井真弘多に「『できる限り県外』という言葉を守らなかったことを心からお詫びする」などと語っていた。このシーンはテレビで生中継され、「何が『できる限り県外』か」と、政治部デスクの誰もが言葉の言い換えに怒りを露わにしていた。