次期衆院選は自民党と民主党が政権をかけた「天下分け目の戦い」となる。自民、公明両党が過半数を取って連立政権を維持するか、あるいは民主党中心の野党政権が誕生するのか。現時点で予測すれば、余程のことがない限り、自民党は歴史的な大敗を喫するだろう。
もちろん、政界の一寸先は闇。選挙の結果は最後の最後まで分からない。しかし、今回に限っては、「民主党に政権を任せては」という有権者が増えているのは間違いない。最近の共同通信の世論調査によると、次期衆院選比例代表の投票先は、自民党34.9%、民主党34.8%と拮抗(きっこう)。時事通信の世論調査では民主党31.3%、自民党は28.8%と逆転している。共同は麻生内閣発足直後、時事は自民党総裁選告示直後の調査だから、「ご祝儀」があるはずなのに、やっと五分五分なのである。自民党は野党転落にとどまらず、存亡の危機に立たされるかもしれない。
果たして、4度目の挑戦で自民党総裁に選出された麻生太郎(以下敬称略)がこのピンチを救えるのか。祖父は故吉田茂元首相という政治家一家で育ち、毛並みは抜群。べらんめえ口調で、明るい楽観主義者。漫画好きで、アキバ系の若者から絶大な人気を得たユニークなキャラクターではあるが、政治家としての軽さが否めず、小泉純一郎元首相のようなカリスマ性はない。
初出馬で失言、「下々の皆様」
愛嬌はあるが、好き嫌いが激しい。お坊ちゃん育ちだけに、人を見下す癖も抜けきらない。過去には差別的な失言もボロボロ。衆院選初出馬の際、福岡県飯塚市での街頭演説で「下々の皆様」と呼びかけたのは語り草だ。麻生派はわずか20人。政界でも麻生を本当に慕う議員は少ない。宴席での座談はうまく、「半径2メートルの男」と言われるが、品はない。麻生人気がいつまで持つのか。「賞味期限は短い」とささやかれ、与党議員は「麻生の失言が選挙前に出やしないか」と戦々恐々としている。
麻生内閣発足直後の報道各社の調査によると、内閣支持率は日経53%、読売49.5%、共同通信48.6%、朝日48%、毎日45%の順であった。いずれも福田内閣発足直後よりも低い。自民党内には「ご祝儀効果」で6割超を期待する声もあったが、国民の目はシビアだった。