ニッケイ新聞 2012年6月20、21日
日本食ブームと言われて久しい。高級なものからテマケリアといった手軽なものまで広がり、2006年にはブラジルの伝統料理を供するシュラスカリアの数を日本食レストランが超えた。名実共に「市民権」を得た格好だが、本場のものとはほど遠いのが現実。
そんななか、醤油の老舗メーカー『キッコーマン』、日本で最大の店舗数を誇る牛丼チェーン店『すき家』、岩手の蔵元『南部美人』がブラジルを次世代の巨大マーケットと捉え、“正しい”日本の味を伝えようと奮闘している。
それぞれの代表にブラジルゆえの難しさ、今後の展望などを語ってもらった。(構成・本紙編集部)
――若い人が貪欲に外国文化を受け入れ、美味しいものにはお金を払う人たちも増えてきた。一方、「すき家」が店舗展開しているのは若い学生の多い場所。「バールで15レより牛丼10レ」。若い人が醤油味の牛肉を米をかきこむ。箸を使って。この『丼文化』が10年20年と続けば、日本食を楽しむブラジル人の裾野は広がるでしょうか。
久慈 “学校”に通ってもらってる。就職してある程度お金使えるようになったら、もっと高い日本食に移行すると思う。20年したら「南部美人」飲んでもらえる。
(全員爆笑)
久慈 このパターンって他の国にはないんじゃないかな。「すき家」100店が実現したらすごいことになる。
――バルエリ(サンパウロ市から西に約24キロ)を除いて、あと7店は全部サンパウロ市内。これからどういう形で広げていくんですか。
高山 基本的には物流の問題があって広い地域に急展開できない。肉はセントラル・キッチンで切って、毎日配送する。まずはサンパウロプラスアルファの場所から。但し全国に早く展開したいですね。
――日系人の多いモジとかスザノはどうですか。
高山 大体20店舗くらい見えてきたら、次が見えると思う。チェーン店は大体10店舗以上でないと成り立たない。
――客の年齢層ってどのくらいなんですか?
高山 ブラジル人でいうと若い人が多い。
――そこは非日系と日系を分ける?
高山 日本食を安く食べられるから日系人の場合は年配の方も多い。ブラジル人の方は牛丼がどんなものか分からないから少ない。若者は新しいもの好きだし安いしで来る。
――高い年齢層は将来的に期待できないですよね。
(一同笑い)
高山 ただ1号店(ヴェルゲイロ店)が約2年になりますが、徐々にブラジル人、特に白人系の方も来られるようになったのは嬉しいですね。
――日本で出稼ぎ経験のある人が何万人っていうレベルでブラジルにいる。そういう人達は、日本で高い日本食ではなくて、ラーメンや牛丼なんかを食べてますよね。そういう人も多いですか?
高山 「日本で食べた」っていう人もいる。
――彼らがもっと日本食の宣伝をしてくれればいいけど、じゃあ日本で「南部美人」飲んでたかっていうとそれはない。そこは期待できない部分ですね。