本流トヨタ方式では、タイミングに関する生産管理の用語がいくつかあります。前回は、(1)ジャストインタイム、(2)タクトタイム、(3)サイクルタイムについて説明しました。今回は(4)リードタイムについて説明します。
(4)リードタイム(Lead Time 通称「LT」)
本流トヨタ方式では製品(情報)がAポイントから出発し、Bポイントに到達するまでの時間を、「A・B間のリードタイム(LT)」として常に注目し、重視します。それは次の式が成り立ち、在庫量と密接な関係があるからです。
A・B間のリードタイム=(A・B間の在庫量)/(売れる速さ)
話を前回の寿司売り場に戻します。店頭にある「鉄火巻き」のパックをお客が手に取り、買い物カゴに入れ、残りが「nパック」になりました。この情報を売り場でキャッチした時が「Aポイント」です。
その情報を厨房に伝え、5分かけて細巻きを5本作り、切り分けて2パックの鉄火巻きを作って店頭に並べます(Bポイント)。このAポイントからBポイントまでのリードタイムが重要になります。これが最も基本となる「受注から納品までのリードタイム」です。
これを管理することによって、店頭在庫を常に5~10パックで維持したいとします。売れる速さは平均で「2パック/20分」です。あなたならば、どのような速さでパックを補充しますか?
(ケース1)「2パック/5分」の速さで補充する場合
作るのに要する時間で供給することになります。売り場のすぐ後ろでパックを作っている場合がこれに相当します。20分間で1~3パック売れ、残りが8パックになった時点で2パック補充生産にかかれば、5分間で出来上がります。この5分間に売れる確率は低いので、できたものを並べれば10パックに戻る計算になります。ですから8~10パックの在庫で運営できます。
(ケース2)「2パック/20分」の速さで補充する場合
同じく8パックになった時に発注したとしても、それが到着する20後には、在庫は4~7パックになっています。ここに2パック届いても在庫は6~9パック。在庫がどんどん減ってしまう恐れがあります。「残りが7パック以下の時は4パック注文する」というルールにすると、1回の補充量が2~4パックとバラつくことになりながらも、在庫は4~10パックでかろうじて維持できることが分かります。
この例で分かるように、在庫を一定量に抑えるのには、短いリードタイムで多頻度補充する必要があるのです。そして、このように最後まで売れる速さで作ることによって、売れ残りを恐れての「売価変更」をすることもなく、最後まで売り切ることができ、利益最大を目指せるのです。これこそが「ステキなタイミング」なのです。