米国海兵隊普天間基地に配備されている老朽化したヘリコプターを新型の輸送機「オスプレイ」に交代させる段階になって、配備先の沖縄をはじめとして日本各地訓練飛行ルート予定地自治体で“オスプレイ恐怖症”が頭をもたげている。

ミラマー航空基地で整備中のMV-22B (筆者撮影)

 オスプレイ恐怖症は日本のマスコミや一部の専門家などが、開発段階での悪評をほじくり返して、その後の進展状況を伝えることなしに大げさに取り上げたことによって生じた現象と言える。

 さらに、そのようなネガティブキャンペーンに輪をかけて、日本政府・防衛省が「オスプレイの安全性を確認するまでは日本国内では飛行させない」といった方針を表明したことが、「オスプレイという奇妙な軍用機は恐ろしく危険性が高いようだ」といったイメージを蔓延させるのを助長してしまっている。

 しかし、オスプレイの安全性はすでに日本以外の国際社会では受け入れられている。オスプレイ沖縄配備をめぐる真の問題点は、オスプレイの「安全性」ではなく、日本防衛にとっての「オスプレイの、すなわち在沖海兵隊の必要性」なのである。

「みにくいアヒルの子」だったオスプレイ

 そもそもオスプレイは「V-22」という輸送機の愛称であり、1981年に開発が認可されてから数度の挫折を経て四半世紀の苦闘の結果、2007年6月に公式に配備された。現在はアメリカ海兵隊とアメリカ特殊作戦軍(空軍の特殊作戦部隊が実際の運用を担当している)が各種作戦で使用している。

 ちなみに、海兵隊バージョンは「MV-22B」、特殊作戦軍(空軍)バージョンは「CV-22」というバリエーションで、若干仕様が異なっている。日本に配備されるオスプレイは「MV-22B」である。

 「CV-22オスプレイ」の計画誕生から開発経過そして実戦に投入されるまでの経緯を『The Dream Machine: The Untold History of the Notorious V-22 Osprey』(AolDefense, 08/09/2011)という書物にまとめた米国の国防・外交ベテランジャーナリスト、リチャード・ウィットル氏は、特異な航空機オスプレイをアンデルセンの童話「みにくいアヒルの子」に喩えている。