午後8時になろうというのにまだまだ陽は高い。
東から西へ、僕はマンハッタンのど真ん中を全速力で駆けていた。
どうにもならないような湿気と地下鉄通風孔からわき上がってくるじっとりとした熱気のために酸素補給が上手くいかない。
ワンブロック越えていくごとに、道を行く観光客の数が幾何級数的に増える。
やっとタイムズスクエアに出た。
目的地まであと数ブロック。だが、歩くのさえままならないような人混みだ。
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今回を含めて3度、マンハッタンを全力で走り抜けたことがある。
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【1. マンハッタンで夕日を見るなら】
ハドソン川に沈む夕日はとても綺麗だ。
今なら、マンハッタンの新名所ともなった感のあるハイラインパークで恋人と手をつなぎながら、パークの道半ばにあるパブでビールを飲みながら、または木製のビーチチェアに寝転びながらサンセットを眺める、これがベストかもしれない。
そのハイラインパークがまだまだ打ち捨てられた高架鉄道の残骸でしかなかった2005年の秋、僕の夕日スポットはチェルシーピアだった。
23丁目から西に向かうバスに乗って終点で降りれば、そこがチェルシーピアだ。
かつてはニューヨークを代表する旅客船港だった(かのタイタニック号もここに入港する予定だった!)チェルシーピアは、現在は大型ジムやゴルフ練習場、サッカーグラウンドや体育館、もちろんカフェやレストラン等も多く集まる複合スポーツ&アミューズメントスポットになっている。
ジムでランニングシューズに履き替え、準備運動もそこそこにハドソン川沿いをバッテリーパークに向かってゆっくりと走り始める。
往復でだいたい1時間くらいかけて走る。かなり気合いの入った運動部の大学生たちに追い越され、連れ立って走る背の高いモデルの女の子たちを追い越した。