悪いことは重なるということなのか。いや、ユーロの危機が表面化して、それまで見えにくかったものまで見えてきたということだろう。

 スペインの銀行危機でユーロは5月31日、2002年に貨幣が流通し始めてから対円に対して最安値を記録した。

7つのノーを突きつけるドイツ

 ユーロ危機を回避できるとすれば条件は何か。FT紙のマーティン・ウルフ氏はドイツの決断と実行力にかかっていると言う(「ドイツの国益を巡る謎」)。

 まず、ウルフ氏の見立てではドイツは次のような政策を取ろうとしている。

 「ユーロ圏の共同債はダメ、欧州安定メカニズム(ESM)が利用できる資金(現在は5000億ユーロ)の増額はダメ、銀行システムに対する共同支援はダメ、ドイツ自身も含めて財政緊縮からの逸脱はダメ、中央銀行を使って政府支出を賄うマネタリーファイナンシングはダメ、ユーロ圏の金融政策の緩和はダメ、ドイツ国内での強力な信用ブームはダメ――」

 「危機時に権力を握る債権国が、少なくとも7回、『nein(ドイツ語でノーの意)』と言っているのだ」

 こうした頑な姿勢がユーロを弱めていると氏は見る。そしてユーロを救えるとしたら7つのノーのうちいくつかをイエスに変えることだと言う。

 「理想的には何らかの形のユーロ共同債を通じた資金供給の拡大や、共同体としての銀行支援、財政緊縮策の緩和、より拡張的な金融政策、ドイツの需要拡大などが求められる」

 「こうした方針転換は成功を保証するものではない。だが、少なくともユーロ圏に、部分的あるいは全面的な解体のコストを回避するチャンスを与えるはずだ。こうした転換が長期的に効果を発揮するには、さらなる政治統合も必要になるだろう」

 6月に入り、ギリシャの再選挙まで3週間を切った。今月、歴史は大きく動くかもしれない。そのとき、日本は傍観者ではいられない。ユーロ崩壊の影響は極めて大きいからだ。

 さらに、中国に抜かれたとはいえ世界第3位の経済大国として、内需拡大によって日本経済だけでなく世界経済に貢献するという意思を示すことも日本のリーダーには求められているのではないだろうか。

 日本がいまやるべきは経済を冷やす消費税増税では決してない。敗戦国の負け犬根性はそろそろ捨ててリーダーの自覚を持て。それができないなら、若者にポストを譲るべきである。