ニッケイ新聞 2012年4月6日
私達が住む「ブラジル」が現在のような多文化が入りまじった形になったのは、どのような経緯からか。移民はその文化形成にどんな役割を果たしているのか。そして、ブラジル文化は世界にどのような影響を与えているのか。
座談会はこれらをテーマにして、ブラジル文化に詳しい岸和田仁(ひとし)さん、ポルトガルに駐在歴のある小林雅彦さん、モザンビークに3年いた中山雄亮さんの3人に参加してもらい、深沢正雪編集長が司会をして1月31日にニッケイ新聞社内で行なわれた。
ポルトガルのポ語との違いについての興味深い指摘から、イタリア移民が及ぼした食やノベーラへの影響、さらにアフリカのポルトガル語圏諸国の文化についてまで縦横無尽に話題は展開した。ここでは各人の役職とはいっさい関係なく、個人的な意見や体験、思いをざっくばらんに語ってもらった。(編集部)
最終回 世界を南米から見る視点
邦字紙が続くことの意味
深沢 まったく違う東洋文明から来た日本移民と、同じ西洋文明であるイタリアから来た移民というのは、かなり適応への難易度が違かったんじゃないかと。
岸和田 違うでしょうね。イタリアは、言葉だってあまり変わらないわけですから。そうですね、ポルトガル語の相手に向かってイタリア語でけんかすることも可能だったでしょうね。半分以上通じますから。
深沢 半分以上通じちゃう世界なんですか。日本の方言同士の方が通じない場合がありますよね。だいたいイタリア移民の物語のノベーラってしょっちゅうやってますね。
グローボ局だけでも『O Rei do Gado』(1996年)、『Terra Nostra』(1999年)、『Esperanca』(2002年)、それに昨年の『Passione』でしょ。イタリア移民だらけ。
岸和田 ノベーラの中で一応イタリア語らしいのをしゃべったりして。
深沢 ははは。あれやっぱりイタリア語訛りでポルトガル語喋ったような。
小林 そうそうそう。
深沢 昨年の『Passione』なんかは、わざわざ俳優もイタリア系子孫を集めたんですよね。それだけの俳優がいるってこと自体が、何をかいわんやっていう。例えば日系俳優だけ集めてノベーラに一家族出そうと脚本家が考えても俳優がいない。これなかなか難しいですもんね。