昨(2011)年7月に最後のスペースシャトルが打ち上げられて以来、米航空宇宙局(NASA)のシャトル計画に携わっていた人たちが解雇の憂き目に遭っている。

 シャトル計画の終焉はバラク・オバマ政権が誕生する以前から決まっていたが、30年間に計135回のミッションを支えてきた科学者やエンジニア、宇宙飛行士、シャトル用の専門パーツを提供してきた部品メーカーの社員など、1万人以上が失職した。

大統領にも連邦議会にも騙された!

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輸送機の上に載せられたスペースシャトル「ディスカバリー」〔AFPBB News

 解雇について、インターネットの書き込みには元NASA職員たちが憤懣をぶつけている。フロリダ州在住の1人の怒りが目を引いた。

 「オバマ大統領は2008年の大統領選時、『シャトル計画が終わっても、職員は誰一人として解雇されることはない』と明言したのです。許せないのは大統領だけではありません。連邦議会もシャトル計画の予算を完全に削ってしまいました。だから政治家は信じられない。我々は政府に見捨てられたのです」

 2013年度のNASA予算を眺めると、シャトル関連の項目だけが前年度比でマイナス96%という事実上のゼロを示していた。

 計画そのものが終わったので無理もないが、実はシャトル予算だけでなく、オバマ政権はNASAの予算全体(177億ドル=約1兆4500億円)もわずかだが削減していた。

 専門家によっては、シャトル計画の中止に直面しても商用宇宙船や宇宙探査技術の開発予算が増額されているので、NASAの宇宙開発の取り組みは別分野で継続されていると解釈する。宇宙開発への夢は継続されているというのだ。

 しかしスペースシャトルは「ご苦労さま」と幕が引かれてしまった。シャトルの前段階として1972年まで続いたアポロ計画があり、その後NASAのウェイトはシャトルへと移行していた。

 だが、オバマ大統領の選挙公約とは裏腹に、シャトルに従事していた人たちはほとんど再雇用されなかった。

 逆の捉え方をすると、宇宙工学分野の企業や団体にとって、30年ぶりにNASAの科学者やエンジニアを大量に雇える環境が整ったということでもある。さらに特筆すべきことは、科学者であっても起業家としてIT企業を起こす人が少なからずいるという事実だ。