日本の農業は今、農業人口の減少・高齢化や国内需要低迷などの厳しい環境にさらされている。特に地方では、農業の衰退が地域経済に及ぼす影響は深刻だ。

 こうした中、商業、工業との連携を強化することによって、農業および地域経済の活性化を促進しようとする政府や地方自治体の動きが近年、国内各地で拡大している。

 「食クラスター」を通した農商工連携の取り組みが顕著な地域の1つに北海道がある。本記事では、国内最大の食料供給力を有する北海道農業の特色を踏まえた上で、食のクラスターの取り組みを紹介しよう。

高い生産効率性と収益性を誇る北海道農業

 北海道の農業は、1869(明治2)年の開拓使の設置によって本格的に始まった。

 ウィリアム・クラーク博士など農業専門家を「お雇い外国人」として招き、さらに札幌農学校(現在の北海道大学の前身)の設立を通して西洋の近代的農業技術を導入して発展してきた。

 その後、今に至るまで農地の土壌改良や圃場整備が進められている。土地の面積・歴史的背景による制約が大きい都府県に比べて、大規模かつ効率的な農地開発が進展したという特徴が北海道にはある。

北海道は日本の一大穀倉地帯。道の中心に位置する美瑛町ではじゃがいも畑が広がる

 農林水産省北海道農政事務所の「2010北海道農業の概要」によれば、北海道は今、日本の耕地面積の約25%を占め、食料自給率は187%にも達するほどの主要な農業地帯となっている。とりわけ小麦、豆類、乳用牛といった品目での全国産出額シェアは、それぞれ53.2%、43.2%、46.6%と突出している。

 農畜産物産出額も約1兆円と、2位以下の都府県を2倍以上引き離し、国内最大規模の食料供給力を保っている。また、主要農産物の1ヘクタールあたりの収穫量や1戸あたりの農業所得も全国平均を上回るなど、生産効率性や収益性が高い状況になっている。