ユーロの構造問題に切り込めるか

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通貨には中央銀行と財務省の機能がなければならない。ユーロには明らかな欠陥がある(ジョージ・ソロス氏)〔AFPBB News〕

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 もう一歩、踏み込んで考えれば、「ユーロ」というシステムが抱える構造問題に取り組む気があるかどうかが問われている。ECBの国債買い取り方針を受けて、早くも市場は「デフォルトリスク」から「ユーロの信認リスク」へとターゲットをシフトした。ユーロ諸国は、中央銀行と金融政策を共有する一方で、財政政策は各国任せという中途半端な状態にある。ECBの信認を維持したまま、ここから派生する弊害の改善に着手できるかどうかが注目である。

 「通貨は中央銀行と財務省の機能を備えていなければ完全とは言えない。ユーロは明らかな欠陥を抱えている」という著名投資家のジョージ・ソロス氏の指摘は正鵠を射ている。「緊急時には加盟国に課税できる仕組みが必要である。金融システムが崩壊の危機にあるとき、中央銀行は流動性を供給することはできるが、支払い能力の問題を解決できるのは財務省だけだ」

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ユーロ紙幣と硬貨〔AFPBB News

 安定成長協定に基づいて、構成国に財政規律を遵守させるガバナンスの強化は無論のこと、ユーロ圏共通の政府債市場の創設など、域内財政運営の一体化に向けて動き出せるかどうか。G20においても、金融危機の反省を踏まえた金融規制強化など、いくつもの改革がなされようとしている。

 ユーロ圏が、ユーロというシステムの強化にどこまで本気で取り組む意思があるかが問われている。ただ、こうした取り組みは長期戦となるため、市場を動かす材料としては徐々にフェードアウトしていくだろう。

2010年後半の投資環境を左右する材料

 足元のグローバル投資環境は、中国、インド、ブラジルなど主要新興国が順調に拡大していることに加えて、2009年第4四半期に消費の底堅さを見せた米国経済が、時間の経過とともに回復の足取りを確かなものにしている。

 IMFは4月に、世界経済成長見通しを1月の3.9%から4.2%に上方修正。米国経済も4月の非農業部門就業者数が前月比29万人増と、いよいよ雇用を増やし始める段階に入ってきた。経済ファンダメンタルズの改善は、各国の株式市場を下支えする効果をもたらしている。

 一方で、2010年の投資環境の特徴として筆者は、(1)経済が正常化に近づいたことで、昨年対比では経済回復のモメンタムは緩やかなものとなる点、(2)2009年の一方的なドル安に歯止めがかかったことで、全ての資産ではなくファンダメンタルズの裏づけのある市場や通貨が選別的に買われる展開となる点、(3)政策当局者の優先順位が「経済回復」から「出口戦略」に移行し、各国の政策対応が終了していく点を指摘してきた。いずれも株価の一方的な上昇には足かせとなる材料だ。