日本が好天に恵まれたゴールデンウイークを楽しんだ5月第1週は、欧州連合(EU)にとって、1999年1月1日のユーロ導入以来、最も重要な週として歴史に刻まれることになるかもしれない。
2010年4月27日、大手格付け会社スタンダー・アンド・プアーズ(S&P)がギリシャを「BBB+」から、投資不適格の「BB+」に一挙に3段階格下げした。それを引き金としたグローバル市場の混乱ぶりは、敢えてここで繰り返すまでもないだろう。
5月9日のEU緊急財務相理事会が国際通貨基金(IMF)と共同で総額7500億ユーロの緊急支援パッケージを取りまとめ、翌10日に欧州中央銀行(ECB)がユーロ圏の国債買取り方針を発表したことで、市場はようやく落ち着きを取り戻しつつあるが、いまだ予断を許さない状況だ。
ギリシャ問題の今後の行方と、グローバル市場における2010年後半の材料を考えてみたい。
ギリシャ問題はいまだ問題解決への入り口
今回の支援パッケージは、既に発表済みのギリシャ向け支援1100億ユーロに加えて、他のユーロ圏に危機が及んだ場合に備えて、EUの最大5000億ユーロの貸出・保証枠とIMFの最大2500億ユーロの貸出枠から成る緊急融資制度を用意したものである。
しかし、これでギリシャ債務問題が解決に向かうと考えるのは早計だ。
同パッケージは、ギリシャ危機がポルトガルやスペインなどの他の南欧諸国に波及することで、ユーロというシステムが崩壊に向かうことを防ぐ「見せ金」に過ぎない。市場の攻撃に立ち向かうためには金額は大きければ大きいほどよく、現に、これだけの金額を積まれたことで、投機筋も一旦はギリシャ債やユーロの売りポジションを多少手仕舞ったようだ。
しかし、見せ金はあくまで見せ金でしかない。ギリシャをはじめとする政府債務残高の大きいユーロ構成国が財政規律を取り戻すまでの、3年程度の時間稼ぎを念頭に置いたセーフティーネットを用意したに過ぎない。
本当に重要なのは、ギリシャの債務削減策(緊縮財政)の着実な実行であり、中期的に国際競争力を取り戻すための構造改革を遂行する国民の努力である。今後、市場はこれらの進捗度合いをチェックしながら、再度攻撃の機会をうかがうはずだ。