米国東部、ボストン市内の自宅で、ニワトリを飼っていた女性がいた。女性はニワトリが生む新鮮な卵を毎日食し、友人たちに、ニワトリを飼うことで庭の害虫が減ったことや、自分が口にする食材がどこから来るかを知ることがいかに大切かなど説いていた。

 しかしボストン市は、ニワトリおよび家畜を市内で飼うことを禁止している。

 この女性がニワトリを飼っていることを知った当局は、強制的にニワトリを撤去させた。

 この、一見どうでもいいようなニュースが米国で注目を浴びたのは、全米の都市部で家畜を飼うことが最近大流行りだからだ。

 ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコなどの大都市では、ニワトリなどの家畜を飼うことができる。

 他の都市もこの1年で続々と「卵や乳を採るだけで、市内で屠畜しない」という条件付きで許可したり、事前に講習を受けることを条件に許可するなど、いわゆる「都市部畜産業(urban animal husbandry)」を推進する動きが活発化している。

 都市部の家の裏庭や空き地、ビルの屋上などを利用して野菜や果物を育てる「都市農業」が定着して久しいが、それが発展した形で流行ってきたのがこの都市畜産業なのだ。

ガーデニングはもう古い

 「庭でハーブや野菜を育てるなんて時代遅れ」とのうたい文句で、自宅でニワトリとアヒルを育てる講習会がサンフランシスコで定期的に開かれている。

 養鶏業の専門家によって、どのような小屋が必要か、餌の種類や与える量、病気を予防する方法などの実用的な知識から、都市部で家畜を飼うための法的知識まで説明があり、この講習の後は誰でも「都市卵」生産者になれるとして人気が高い。

 ニワトリは比較的世話が楽であるため、この世界では入門編だと言われている。市内のペット専門店でも郊外の農場でも簡単に手に入る上、インターネットで注文することもできる。最近では、屋内でニワトリを飼いたい人のための「ニワトリおむつ」まで売っている。