続いて同報告書は「従来同様、中国市民には自分たちの政府を変える権利が認められていない」としたうえで、具体的な問題点として以下の諸点を列挙している。少し長くなるが、報告書の全貌を理解していただくためにも、あえてこれらを書き出してみたい。
●司法・法の適正手続きに基づかない処刑、拷問、自白の強要および強制労働
●法に基づく権利行使を求めるジャーナリスト、作家、反体制活動家、請願人、弁護士およびその家族たちなどに対する監視、迷惑行為、拘禁、逮捕および収監
●法の適正手続きの欠如と弁護士活動に対する制限
●共産党と政府による裁判所・判事に対する厳しい政治的管理、非公開裁判、行政拘留および非合法拘置所での違法な拘留
●政治的に問題とされる個人・団体の言論、集会、信仰、移動の自由の厳しい制限
●難民と亡命希望者に対する不十分な保護
●内外NGO活動に対する厳しい調査と制限
●腐敗汚職、人身売買、女性・未成年・障害者の差別など人権に影響を及ぼす社会条件の放置
●中絶・不妊手術の強要を含む産児制限に関する強制措置
●労働者の独立した労働組合を選択する権利およびストライキ権の禁止
続いて同報告書は、2009年に中国全土で発生したこれらの問題につき、一つひとつ、具体的日時を挙げ、権利侵害の実態と制度上の問題点を細かく記述している。
これらに目を通すと、米国が問題視するのは、チベット、ウイグルなど少数民族弾圧政策にとどまらず、中国の行政・司法制度の欠陥そのものであることがよく分かる。
