2003年秋のグルジアに起こったバラ革命は、旧ソ連圏の一連の「民主化革命」の嚆矢とされる。しかし、アフガニスタン情勢の混迷やグルジア紛争、米オバマ政権の誕生などを経て、地域を取り巻く国際環境も大きく変化した。
グルジアでも西側への熱意が冷めつつある?
今年前半にはウクライナで大統領が交代し、キルギス(クルグズスタン)でも政変が起こり、その潮目は大きく変わったようにも見える。折しもグルジアでは、今月末に首都トビリシを含む市長選挙など地方選挙が行われる。
最近発表された調査データに基づいて、今後のグルジア政治の行く末について考えてみたい。
今回注目するのは、2010年4月にコーカサス研究資料センター(CRRC)が米国民主党国際研究所(NDI)の委託を受けて行った世論調査である。初めにその結果を要約すれば、以下の3点に集約できるだろう。
●北大西洋条約機構(NATO)加盟に対する熱は冷めつつある(欧米への期待がしぼみつつある)
●ロシアに対するアンビバレントな感情(支配されるのはごめんだが、ロシア抜きで領土問題は解決できそうにない。経済的にも重要な相手)
●政権与党に対する民意は厳しいが、それでもとりあえず政権は盤石(楽天的な国民性と内部での秩序の維持に現状では成功か)
潮目の変化?
今回の世論調査でまず注目されるのは、NATO加盟への積極的支持の目減りである。2008年大統領選と同時に行われた国民投票では72.5%が加盟に賛成し、いわば国民合意がなされたとグルジア政府は考えている。
また、グルジア紛争直後の2008年9月の調査では一時的に69%が加盟積極支持、17%が支持と、実に9割近い国民が加盟への賛意を示したとされる。