前回および前々回の記事にて、活性化するカンボジア商業銀行の現状と、その銀行業界に先行進出した日系企業の挑戦についてご紹介した。
この数年間で間接金融が急速に国全体に浸透し始めたカンボジアで、銀行業とは業界を線引きされる形で、同様に活性化の兆しを見せ始めている金融事業がマイクロファイナンスである。
2011年11月末時点で、中央銀行から正式にライセンス認可されたマイクロファイナンス機関(Micro Finance Institution:MFI)は30機関、NGO型MFIは86機関(うち26機関が2010年10月現在中央銀行に正式登録)に達した。さらなる進出に向けた現地・外資双方の勢いは全く衰えを見せない。
貸出残高は1000億円規模に
2011年11月末でのMFI30機関全体の貸出総額は約5億7100万ドル(約445億円)。そのほぼ同額かそれ以上に匹敵するマイクロファイナンスを、現地商業銀行最大手ACLEDA銀行が賄っていると言われる。
市場全体の総額は約1000億円規模(貸出残高ベース)に到達し、その市場拡大はますます加速する様相を見せている。
新興国カンボジアで急速に拡大するマイクロファイナンス。資金の出し手として現地資本・外資資本が混在したMFIの急増は、急成長する新興国経済における国内消費・投資の活性化に伴う金融需要の増大と金融事業チャンスの拡大を意味する。そして、それら貸し手機関のカンボジア進出意図を推察するのは容易である。
では果たしてその資金ニーズ、つまり資金の借り手であるカンボジア人の金銭消費の実態は、現状どのようなものなのか? まずはこの点から見ていきたい。
カンボジアの首都プノンペン。2008年国勢調査によると、その人口は138万人で、全人口約1400万人の1割弱が首都に集中しているという結果だった。
それ以降、正式な人口調査は行われていないが、それから現在に至る約4年間、首都への人口流入は、当時からプノンペンを見ている筆者の感覚からしても、目に見えて増加している。
一説には200万人をすでに超えているとも、300万人に達するとも言われる首都人口。大げさになりがちな現地の噂は話半分としても、150万~200万人の間にはなっていると言われれば、現地で人の流れの増大を体感してきた筆者に違和感はない。