1月6日、政府は「(社会保障の)給付に見合った負担を確保」するために、消費税を「2014年4月より8%へ、2015年10月より10%へ段階的に引上げを行う」という決定を下しました(「社会保障・税一体改革素案について」より)。

 しかし、消費税を現状より3~5%増やすだけでは、とても「納得感のある」社会保障にはならないでしょう。

 素案に記載されているように、「(高齢化に伴い)毎年1兆円規模の社会保障の自然増が不可避」であるならば、「1%=2.5兆円」とされる消費税を今後10年で4%アップさせたとしても、ようやく現状維持にしかなりません。

 さらに、破綻の危機が叫ばれている財政の健全化を図ろうとするのであれば、毎年発生している財政赤字50兆円分をカバーするために消費税換算20%のアップが必要です。

 ですから、支出の削減についてほとんど触れられていない「社会保障・税一体改革素案」を進めるとなると、消費税が将来的に30%程度にまで上がる可能性が高いということになります。

 そんな事態になるよりも先に、歳出そのものの抑制策を真剣に考えるべきなのは、誰が見ても明らかと言えるでしょう。

「全て無料」がモラルハザードの温床

 特に医療においては、一律何%カットというハードランディング的な政策以外にも、保険制度の見直しで歳出抑制が可能な方法がいくつか考えられます。

 1月13日、大阪市の橋下徹市長は、財政負担が年間1292億円に達する生活保護医療扶助に対して、「意図的な過剰診療などを繰り返す悪質な医療機関を(生活保護指定医療機関から)排除する」という方針を打ち出しました。

 生活保護者の医療費用は全額公費です。そのため、例えば腹痛を訴える来院者に、9割方異常はないとは分かっていても、血液検査一式、レントゲンはもちろんのこと、入院させた上でCTや胃内視鏡検査・大腸内視鏡検査など、保険の範囲内の全ての検査を行う医療機関が見受けられます。