MRIC by 医療ガバナンス学会 発行

 南相馬市に副市長として総務省から出向している村田崇氏(37歳)から、坪倉正治医師(29歳)に送られたメールが問題になっています。坪倉医師は6年目の若手医師で、東京大学医科学研究所の大学院生です。

村田メール

 震災後、4月より相双地区に入り、5月より、南相馬市立総合病院の非常勤医師として、ホールボディカウンター(WBC)による内部被曝の検査、幼児の内部被曝を調べるための尿のセシウム検査(体が小さすぎるとWBCが使えない)、検診、被曝についての健康相談、さらには除染にまで関わってきました。

 南相馬市立総合病院の医師の中では、被曝について、最も詳しい専門知識を有しています。

 坪倉医師はWBCや尿のセシウム検査の技術的問題についての知識を深めるために、東京大学理学部物理学科の早野龍五教授を訪問しました。ここで、早野教授から南相馬市の桜井勝延市長に対し、早野教授側の費用負担で、学校給食を丸ごとミキサーにかけて、放射性セシウムを測定することが提案されていたことを聞きました。

 坪倉医師は、早野教授から、「南相馬市では検査は不要と断られてしまった」と聞いて驚きました。今後の被曝を防ぐのに、食品の検査が最重要と考えていたからです。特に放射線の影響を受けやすい子供が重要です。

 坪倉医師によると、南相馬市立総合病院のWBCによる検査結果では、セシウムが検出された子供のほとんどは、再検査時、セシウム値が低下していました。しかし、無頓着に自宅で作った野菜を食べ続けている大人の中には、体内のセシウム値がまったく低下していない人がいました。

 ウクライナの研究機関のホームページには、チェルノブイリの住民の体内の放射線量の推移を示すグラフが掲載されています。事故後、線量は上昇しました。食品検査を徹底したところ、線量は一旦低下しましたが、10年後、再度上昇しました。

 ウクライナのWBC研究所の責任者は、坪倉医師に、ソビエトが崩壊し、食品の流通経路が変化したことと食品検査が不十分になったことが原因だったと説明しました。再上昇の後、食品検査を徹底したところ、内部被曝は再度低下しました。

 以後、現在に至るまで、ウクライナやベラルーシでは、食品検査と内部被曝の検査が継続的に、頻繁に行われています。

 2011年11月11日、坪倉医師は、食品の検査体制の強化が重要なので、早野提案を検討してほしいとのメールを桜井市長と村田副市長あてに送りました。

 これに対し、村田副市長から返事がありました。その文面に、坪倉医師は困惑し、私を含む何人かに相談しました。以下、このメールの意味を解析していきます。