上海で手広くビジネスを展開する自称「セレブ」が誇らしげに言う。「新疆ウイグル自治区に林地を買ったの。これからは“森林”よ」

 彼女は温州の銀行からの融資で、広大な面積の森林を仕入れたのだ。

 某シンクタンクに所属するX氏も、「今後5年、中国経済を牽引するビジネスは林業だ」とコメントする。不動産に代わる新たなビジネスとして、森林に注目しているのだ。

「森林」が今後5年の経済計画のキーワードに

 確かに中国で森林ビジネスへの投資は増えている。

 2011年1~5月、木材加工業への投資金額は532億元(前年同期比35.2%増)、家具製造は532億元(前年同期比30.8%増)、製紙は378億元(前年同期比18.7%増)となった(国家林業局)。

 前出のX氏は「今後10年で木材価格は大幅に上昇するだろう。今、投資するなら木材市場だ。なぜなら木材は有限だからだ」と強調する。

 日本人にはあまりピンとこないが、中国国内でいま最も供給不足なのは、木材や木工製品だと言われている。中国では2000年に入ってから、住宅購入がブームとなっている。同時に、建材や家具などを中心に木材消費も急増しているのだ。

 2010年の林業総生産高は2兆2779億元。前年比で30%超の増加となった。また、2011年1~5月の全国の木材生産量は4500万立方メートル(前年比20%増)。ボード類生産量は7700万立方メートル(35.2%増)。家具生産量は8209万件。フロア材(すべて木材を使用したもの)は3905万平方メートル(前年比7.3%)と、軒並み上昇している。

 2011年3月に全国人民代表大会(全人代)が採択した「第12次5カ年計画」には、「森林」が重要なキーワードとして登場する。

 そこからは、生態系を保護しながらも森林を活用して様々なビジネスを展開し、経済発展の次なる牽引役にしようという思惑が読み取れる。「興林富民」(「森を興して民を富裕にする」)は、中国の次期経済計画のスローガンでもある。