埼玉県に、10~20代の若者が全国から訪れてくる不思議な神社があります。

 この神社とは、埼玉県久喜市にある「鷲宮神社」。関東地方で最古の大社とされている由緒ある神社です。国の重要無形民俗文化財である神楽が奉納されることでも知られています。1万坪もある木立に囲まれた広い境内は、森厳な雰囲気をかもし出しています。

 この神社に若い人が集まり始めたのは2007年5月頃のこと。神社に参拝に来る若い人たちが増えてきたことを、最初は、誰もあまり気に留めませんでした。しかし、その数はどんどん増える一方。

 そこで調べてみたところ、どうもこの神社が「らき☆すた」というアニメの舞台になっていて、そのファンが「聖地巡礼」と称して訪れるようになっていたのです。

アニメ人気に商工会が目をつけた

 「らき☆すた」は、アニメやゲームが大好きな小柄な女子高生、泉こなたと、容姿端麗で博識な高良みゆき、そして、柊つかさ&かがみ姉妹の4人を中心とした4コママンガ。このマンガに登場する柊姉妹は、父親が宮司を務める「鷹宮神社」に住むという設定です。そして、この鷹宮神社のモデルになったのが、鷲宮神社だというのです(ちなみにこのマンガの作者である美水かがみさんは埼玉県在住です)。

鷲宮商工会が開発した「ツンダレソース」
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 もともとは角川書店の「月刊コンプティーク」という雑誌に連載されていたのですが、2007年4月から半年間、そのアニメ版がテレビで放送されたことで人気沸騰。アニメ放映が終了した後に、「聖地巡礼」と称してアニメファンが詰めかけ始めたというのです。

 アニメ終了後にマンガの単行本や続編がDVDでリリースされ、ゲームも商品化。フィギュアなどの関連グッズも売り上げを伸ばすなど、人気は衰えを知らない状態。

 こうしたアニメ人気で鷲宮神社に訪れる巡礼者が増え続けるところに目をつけたのが、鷲宮商工会です。

 最初に、地元の製菓会社に6個入りの「聖地巡礼饅頭」を発注したところ、瞬く間に売り切れたのがきっかけとなりました。そして、出版元である角川書店に商品企画を持ち込み、そこから地域と出版社とが連携した画期的な商品開発が始まりました。

住民票まで発行、町ぐるみでイベントを開催

 商品化されたのはストラップやTシャツ、クッキーばかりではありません。やきそばは「らき☆そば」という名前で売り出され、「らっきー☆団子」「柊姉妹煎餅」「柊そ~せ~じ」など鷲宮は「らき☆すた」一色に。

 さらには、ヒロインの「普段はツンツンしているが、デレる時はヘタレながらデレる」という性格から味を開発(?)した「ツンダレソース」が商品化されて、これまで人気となるというフィーバーぶり。