「問題は、今後『限購令』がどうなるかだ。このままでは業界全体が落ち込んで、中国経済にも打撃を与えてしまう」――。
こう吐露するのは、上海市内で内装施工を手がけるS社の中国人社長だ。これまで羽振りの良かった内装業だったが、「限購令」が導入されて以降、すっかり「商売あがったり」となってしまった。
中国の不動産は、一般的に購入者が自己負担で内装を施工する。そのため、不動産購入ブームが続いた2009年まで、内装業は引く手あまただった。だが、2010年下半期以降、そのビジネス環境は大きく変化している。
「これ以上は野放しにできない」と限購令を施行
振り返れば2009年、上海では猫も杓子も不動産購入に走り、空前の不動産ブームが沸き起こった。
この年の中国のGDPは33兆5353億元に上り、前年比で8.7%増の成長となった。中国では「不動産、建設業だけで、ざっとGDPの1割を占める」と言われるが、この年、分譲住宅の販売だけで約4兆4000億元に達し、GDPの13%を占めるに至った。中央政府も「これで『保八』(8%の成長維持)が達成される」と喜んだ。
その一方で、住宅価格の過度な値上がりは危険水域に達していた。2009年末以降、何度となく価格抑制策は導入されたものの、それでも多くの資金が不動産市場に流れ込み、住宅価格はどんどんつり上がっていった。「今、買わなければ、一生買えない」と消費者の心理も突き動かされた。
都市によっては倍以上に値上がりしたところもあった。度を越した価格上昇をこれ以上野放しにはできないと判断した中央政府は、2010年第4四半期に“価格抑制策の決定版”とされる「限購令」を導入した。
限購令とは「各都市に戸籍のある者しか買えない」「保有できるのは2戸まで」「外地戸籍者は1戸まで」などとするもので、購入そのものの行為を規制する法令だ(各都市の実施細則により多少の違いはある)。