マット安川 今回のゲストは韓国人ジャーナリストの池東旭さん。来年に選挙を迎える韓国の情勢、米韓FTA、日本のTPP対応まで、鋭い見解をいただきました。
海外任せの韓国経済。韓米FTAは楽観視できない
韓国慶尚北道大邱生まれ。韓国日報勤務を経て、1981年「週刊韓日ビジネス」を創刊。経済、国際問題など朝鮮半島の諸問題に関する論評を展開する。著書に『コリアン・ジャパニーズ』(角川oneテーマ21)、『韓国大統領列伝―権力者の栄華と転落』(中公新書)など。(撮影:前田せいめい、以下同)
池 韓国でいま最大の焦点は韓米FTA(自由貿易協定)問題です。議会で強行採決して、4年半かかってとうとう11月29日に李明博(イ・ミョンバク)大統領がサインした。来年1月1日から発効しますが、野党はみんなFTA反対だし、国民も反対して毎日デモをやっています。
韓国はどうしてアメリカとFTAを結んだかというと、韓国はEU(欧州連合)のほか7カ国とFTAを結んでいますが、それで輸出が伸びているからです。李明博大統領は現代建設出身で、現代自動車はいまアメリカでバンバン売れていますから、彼としてはやらざるを得ないわけなんですよね。
ただ、韓国のFTAもやってみないと分からないというのが本音です。韓国経済は貿易依存率が98%ですから、貿易をしなければ食っていけないわけです。しかし、海外がくしゃみをすれば韓国はカゼをひくどころか肺炎にかかる。
いまEUの経済が悪化し、中国もダウンしている、アメリカもどうなるか分からない。韓国の経済はあなた任せ、海外任せなんです。これが一番危ない。
韓国がどうしてTPP(環太平洋経済連携協定)には行かないのかというと、中国を意識しているからです。中国は、TPPはアメリカが自分たちを牽制するための包囲網だと考えている。韓国としては中国がいま一番大きな輸出先なので、中国を刺激したくない。
だから韓国がTPPに行かないのは、別に先見の明があるということではないんです。
韓国でも日本と同様、既成政党離れが進んでいる
韓国は来年選挙の年で、4月に総選挙、12月に大統領選挙があります。韓国でも最近、日本と同じような現象が起きていて、既成政党に対する不信感が非常に強い。与党に対しても野党に対してもイヤだ、ロクなヤツがいないと。
日本では政治家がキャバクラで飲んだといって問題になっていますけれど、韓国ではもっとひどいことをやっていますからね。みんな怒っています。