米財務省、為替報告書の発表を延期 中国に配慮か

4月3日米ティモシー・ガイトナー財務長官は「為替操作報告」の議会提出を延期すると発表。胡錦涛国家主席の訪米に配慮したとみられる〔AFPBB News〕

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3月14日 温家宝首相、人民元切り上げを拒否
3月15日 米議会の超党派議員130人、中国の為替操作への対抗措置を求める
3月24日 中国、対イラン追加制裁協議に参加

4月1日 中国、胡錦涛国家主席の「核安全保障サミット」出席を発表
4月1日 日本、安保理議長国となる
4月1日 中国外務省報道官、「イランはIAEA(国際原子力機関)の監督を受ける要あり」と発言

4月2日 オバマ・胡錦涛、電話で約1時間会談
4月3日 ガイトナー財務長官、「為替操作報告」の議会提出を延期と発表
4月6日 米政府、核態勢の見直し(NPR)を発表

4月12~13 日 核セキュリティーサミット(ワシントン)
4月15日 米財務省の為替操作国報告書の対議会提出期限(当初)

中国側の思惑

 以上は事実関係だが、ここからは筆者の推測となる。中国側が過去1カ月間の動きを正直かつ分かりやすく解説するはずなどないのだから、どうかお許し願いたい。以下はあくまで中国政治指導者の「本音」に関する1つの仮説である。

(1グーグルが撤退したいなら、勝手にすればよい。台湾への武器供与やダライ・ラマ問題も想定内の話で、もう織り込み済みだ。しかし、人民元の急激かつ大幅な切り上げは中国内政上も絶対に認められない。

2現在米国の最大関心事は対イラン制裁と核サミットの成功であろう。イランについては追加制裁の議論再開を餌に交渉すればよいが、胡錦濤国家主席の核サミット出席直後に中国が「為替操作国」と認定されたら、胡錦濤国家主席の面子は立たず、国内で政治問題化する。

3米財務省の対議会報告に中国が含まれることは避けたいし、それが不可避ならば、少なくとも報告書提出は4月15日以降に延期させる必要がある。人民元の切り上げについては、いずれ何らかの妥協に持ち込むしかないだろう。

4NPRについても懸念がある。戦略核兵器の問題を米露だけが仕切ることは認められない。中長期的には中国も戦略核兵器を増強し、この分野でも米露と対等に交渉できる立場を確立する必要がある。