2010年3月、斬新なギャラリーショップ「アノニマス・ショップ」がニューヨーク市内でオープンした。その店舗は改造した1964年製キャンピングカーの中にあり、アーティストがデザインした商品を走りながら販売するモバイル型ショップだ。

ニューヨーク

 神出鬼没のギャラリーショップを開業したのは、ジョセフ・イアン・ヘンリクソン氏。ニューヨーク市内で「アノニマス・ギャラリー」を経営しながら、ポップカルチャーやファッション、都市景観などに影響を与えたアーティストを中心に展示会を企画・実施している。

 ヘンリクソン氏がアノニマス・ショップの構想を抱いたのは2009年のこと。もともと商品開発のビジネスに強い関心があり、ギャラリーショップを始めたいと考えていた。彼のギャラリーはポップアートが中心のため、ファッションなどとの親和性が高い。一部のアート関係者だけではなく、より幅広い顧客層を取り込むチャンスがあると見込んだ。

 しかし、従来型のギャラリーショップでは満足できない。特定の機会に素早く対応し、限定的にオープンする――。そんな機動的な店舗ができないものかと思案する中で、思いついたのがモバイル型ショップだ。アノニマス・ギャラリーは企画に相応しい場所をその都度借りるため、恒常的に利用する展示会場がない。

 ニューヨークでは木曜日を中心に、展示会のレセプションが開催される。そこに改造キャンピングカーで乗り付ければ、即座にギャラリーショップの「開店」。「集客しなくても、客が集まっているところに行けばよい」という発想の転換なのだ。

ブティックホテル前、場違いのキャンピングカーが・・・

キャンピングカーを改造した「アノニマス・ショップ」(Anonymous Gallery提供)

 1年近くの準備期間を経て、アノニマス・ショップの営業が始まった。最初に店を構えたのは、スタンダード・ホテルの前。アノニマス・ギャラリーの提携先であり、デザインを重視したホテルとして知られる。

 真新しいブティックホテルの前に陣取った、いささか場違いなキャンピングカー。人々が見過ごすはずがない。興味本位で覗き込む通行人がいれば、どこかで耳にして駆けつけた人も・・・。その際立った「店構え」は抜群の集客力を発揮し、村上隆デザインのスケートボードなどが飛ぶように売れた。

 ヘンリクソン氏によると、参加するイベントの客層に応じて、ショップの取扱商品を変えていく。またアーティストとのコラボレーションにより、ここでしか買えない限定商品も予定している。また、イベントに応じてショップの内装にも工夫を凝らすという。