オバマノミクスが徐々に輪郭を現しはじめた。「ニューディール以来の規模」とも指摘される大型景気対策の立案を指示し、経済版ドリームチームのメンバーを矢継ぎ早に発表。市場に安心感を与えた手堅さに注目が集まるが、突如発表された「経済回復諮問会議」こそが、バラク・オバマ次期大統領の掲げた「変革」を実現する秘密兵器かもしれない。
「第一級の経済チーム」。ブッシュ大統領の側近中の側近だったカール・ローブ前大統領次席補佐官でさえ、オバマ氏が11月24日から相次いで発表した経済閣僚級人事を高く評価してみせた。
財務長官にニューヨーク連銀のティモシー・ガイトナー総裁(47)、ホワイトハウスで経済政策の調整を担う国家経済会議(NEC)議長にローレンス・サマーズ元財務長官(54)をそれぞれ起用。経済予測を担当する大統領経済諮問委員会(CEA)委員長には、大恐慌研究で名高いカリフォルニア大学バークレー校のクリスティーナ・ローマー教授(49)を抜擢する。
秀才経済学者の誉れ高く、経済顧問として選挙で貢献したサマーズ氏ではなく、オバマ氏はほとんど接点のないガイトナー氏を財務長官に指名した。その決め手は「経験」と「若さ」だ。
上院議員に就任してわずか3年。オバマ氏は選挙期間中、絶えず国政の「経験不足」を批判されてきた。
ガイトナー氏が務めるニューヨーク連銀総裁というポストは、金融界では財務長官、連邦準備制度理事会(FRB)議長に次ぐ要職。金融システム防衛の最前線を預かる「野戦指揮官」であり、証券大手ベアー・スターンズをはじめとする一連の大型破綻の対応に奮闘してきた。
未曾有の金融危機に立ち向かうオバマ氏は、自分にはない「経験」を最も求めていた。さらにガイトナー氏は次期大統領と同い年。「世代交代」を象徴する目玉人事にもなる。
一方、サマーズ氏には「大統領に最も近い」経済アドバイザーという地位が与えられた。民主党系経済学者の間では中道に位置するサマーズ氏と金融通のガイトナー氏の揃い踏みに市場は安堵し、財務長官人事が米メディアによって事前報道された22日からNYダウは上げ続け、28日終値まで17%も上伸した。
12月1日、全米経済研究所(NBER)は米経済が昨年12月からリセッション入りしていたと公式に宣言した。オバマ氏は、ヒラリー・クリントン上院議員(61)を国務長官に、ビル・リチャードソン・ニューメキシコ州知事(61)を商務長官にそれぞれ指名。挙党体制の下で、2年間で250万人の雇用を創出・確保する「オバマ版ニューディール政策」の具体化を急ぐ。