財政悪化が深刻なギリシャの悲劇が内外マスコミを賑わしている。フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は早くも次の危機は日本か英国かと論じ始め、日本の新聞もそれに追随するかのような見出しが目につく。悲劇の続編探しはストーリーとしては面白いが、主要国はどこも財政運営は厳しく、日英だけが破綻の危機にさらされているわけでもない。
そもそもギリシャの悲劇はどんな内容で、日英で再演される可能性があるのか。ソブリン(国家債務)問題の背景と行方を考察してみたい。
ギリシャの経済規模は神奈川県と同等
FTは同じ3月5日付の紙面で、「債務危機、ギリシャの次は日本か?」「ギリシャ国債の次は英国債?」との論評記事を掲載した。日英両国とも財政赤字が拡大しているのは事実だが、「ギリシャの次」と論じるほど差し迫ったものではない。また、ギリシャと日・英は、危機を同列視するにはやや無理があるほどに、国の経済規模が異なる。
まず、ギリシャから見てみよう。GDP(国内総生産)は3597億6100万ドル(2008年)で、円換算(1ドル=90円)してみると約32兆円。日本は約500兆円の規模があり、ギリシャはその15分の1にも満たない。ちなみに、内閣府のまとめた県別国内生産によれば、神奈川県が31兆9600億円(2007年度)でほぼギリシャに匹敵する経済規模だ。
「国家の危機」として、連日、新聞紙面を賑わしているものの、実際のところは「大きめの県クラスで大騒ぎ」(生保運用担当者)しているようなものだ。
ギリシャはまた、一国の債務危機としてではなく、ユーロ圏内の一部地域の財政問題であると認識した方が現実的だ。それこそ経済規模で見ると「ユーロ全体の2~3%足らず」(外資系証券エコノミスト)という。安易なギリシャの救済についてはユーロ諸国内の反発もあるが、「最終的には何らかの救済をするだろう」(都銀)との見方が強い。