いまから20年ほど前のことです。東京は新宿、百人町と言えば大久保駅のそばですが、そのあたりに、もっぱら現地人しかいない「シンガポール料理屋」というものがありました。
これが24時間営業で、朝一番でも濃厚な「シンガポール料理」を供してくれるのでした。
初めてここを訪れたのは悪友のW君、NHKでディレクターを務めている男ですが、彼と数日連荘で痛飲した何日目か、明け方になって腹が減ったというとき「ケンさん、面白いところがあるから行きましょう」か何か言われて、もうあたりが白んできたころに訪ねたのでした。
私は今でも、酒を飲んでもあまり変化がないのですが、20代の頃はかなりむちゃくちゃな生活を送っていたような気がします。
さて、このシンガポール料理屋、出てくるものが「文化のメルティングポット」になっていてびっくりするやら感心するやら。注文すると、それまで見たことも食べたこともないものばかりが、机の上に並びました。
シンガポール料理の衝撃
一言で「シンガポール料理」と言っても、ピンとこられる方は少ないかもしれません。実際にシンガポールを訪ねれば、小さな都市国家が4つの言語を公用語にしているのが分かると思います。
英語・・・これは英連邦に属するシンガポールとして当然でしょう。
中国語・・・これは経済の中枢を華僑が回している同国として当然。
マレー語・・・これはマレー半島の突先に位置しマレーシアと縁の深い同国ならでは。
タミル語・・・これは南インドの言葉で、海の民族の往来が多いこの土地にはタミル語を話す人が少なくなく、何より「シンガポール」という名前自体がサンスクリットで「ライオンの町」を意味するものだということでした。
シンガポールはこの4つの言葉、そして4つの民族とその伝統に平等な価値を置く、として国づくりを進めてきました。