前回ご説明したように、中国共産党「第6世代」出世頭のほとんどは胡錦濤の「クローン・コピー」のような人材だ。「太子党」系の面々がこうした「共青団派」中心の人事を黙って看過するはずはない、外国の中国ウォッチャーならまずこう考えるだろう。(文中敬称略)

 既得権益を代弁する傾向が強い「太子党」とは異なり、「共青団派」は社会的平等を目指す改革志向が強いとも言われる。欧米専門家の一部には、第6世代の下で「中国政治は大きく変わる」と期待する向きすらある。

 本当にそうなのだろうか。今回はこの点をさらに詳しく検証してみたい。

「太子党」とは誰のことか

中国の歴代指導者が金の胸像に、北京

金の胸像になった中国の歴代リーダーたち。左から胡錦濤、江沢民、鄧小平、毛沢東〔AFPBB News

 「何を今さら・・・」とお叱りを受けるかもしれないが、実は中国には「太子党」なる政党、政治集団など存在しない。もちろん「自分は太子党だ」と名乗る政治家もいない。それどころか、「太子党」という言葉すら一般的ではないようだ。

 これに対し、「共青団(正式には、中国共産主義青年団)」は組織として現に存在する。「共青団」幹部やその経験者が陰に陽に胡錦濤政権を支えていることも事実だろう。しかし、「共青団派」なる集団が独自の政策を立案・実行している証拠も、これまたないのだ。

 さらにややこしいのは、いわゆる「太子党」系政治家の中にも「共青団」幹部経験者が少なくないことだ。両者は必ずしも対立ではなく、むしろ共存(ないし共犯)関係にあるのかもしれない。「第6世代」ではこの傾向がますます顕著になっていくだろう。

 こう考えると、「太子党」と「(共青)団派」の対立という視点自体が疑わしくなってくる。いわゆる「江沢民派」「上海閥」というレッテルすら怪しいものだ。どうやら、これら対立の構図は外国の中国研究者による便宜上の「仮説」でしかないのかもしれない。