1911年の辛亥革命によって、アジアで最初の共和制国家である「中華民国」が誕生した。

 しかし中国の胡錦濤主席は、10月9日に北京の人民大会堂で開催された「辛亥革命100周年記念大会」の演説で、「中華民国」を完全に無視した。

 胡錦濤主席は、辛亥革命を「君主専制制度を終わらせ、民主共和の理念を広めた」と評価し、辛亥革命から10年後に誕生した中国共産党を、革命の「最も忠実な後継者」であると位置づけた。

 演説では中台の「統一」にも触れた。「孫中山(孫文)先生と辛亥革命の先駆者の中華の振興という偉大な志は、両岸同胞が共に追い求めるものとなるべきである。両岸同胞は血のつながった運命共同体であり、大陸と台湾は両岸同胞の共通のふるさとである」と、ソフトに呼びかけた。その上で、「平和的方式で統一を実現することが、台湾同胞を含む中国人全体の根本的利益に最も合致する」と、「中台統一」の必要性を訴えた。

「中華民国」は台湾に存続している

 翌10月10日、今度は台湾の馬英九総統が「中華民国」建国100年双十国慶節を祝う演説を総統府前広場で行った。

 この演説で、馬英九総統は次のように述べ、中国に民主化の必要性を説いた。

 「辛亥双十節(1911年10月10日)は、海峡両岸にとって、共通の記憶と財産であります。そのため、私はこの機会を借りて、中国大陸当局に呼びかけるものであります。辛亥双十節を記念するには、国父(孫文)による建国の理想が自由、民主主義、富が平均化された国家を建設しようとしたことであるのを忘れてはならないのです。中国大陸は勇敢に、この方向に向かって邁進すべきであり、これが唯一の方法でもあり、そうしてこそ両岸間における現在の距離を縮めることができるのです」

 「また、辛亥双十節を記念する際には、歴史を分断することはできないのであり、さらには歴史の本来の姿を示し、中華民国が存在するという事実を直視しなければなりません。中華民国の存在は過去形ではなく、現在進行形なのです」

 総統は、「統一」という表現は避けて示唆するにとどめ、さらに台湾に「中華民国」が存続中であることを強調した。