リビアの元最高指導者カダフィ大佐が10月20日、同国中部シルトで死亡した。

 「カダフィが死んだそうだ――」

 10月20日、中国のアフリカ系コミュニティーにも激震が走った。アフリカの母国から電話を受けた者もいれば、メールで知らされた者もいる。情報を受け取ったアフリカ人の1人は「信じられない」とつぶやいた。

 中国のメディアもこれを報じた。どの新聞(タブロイド判)もトップ面で扱い、10ページにわたって特集を組むところもあった。東方早報は「カダフィ最後の4時間」の見出しを立て、「市民は街に繰り出し独裁者の死亡を喜んだ」「戦争は終わった、暴君政治も終わった」と報道した。論調はどれも同じくカダフィを「狂犬」と見立て、独裁の終焉に拍手した。

 上海には長期滞在するアフリカ人も多く、そのコミュニティーは拡大しつつある。彼らに「これで良かったと思うか」と筆者が聞くと、「何も殺さなくてもいいだろう」と、むしろ反カダフィ派の残酷さに反感の声を上げる者も少なくなかった

 あるアフリカ人はこう語る。「カダフィは確かに危険人物であり、変人ではあったが、天の裁きを受けるべき独裁者とは割り切れない。非常に複雑な心境だ」

 当コラムでもお伝えしたが、中国在住のアフリカ人に聞くと、アフリカではむしろカダフィを肯定的に受け入れる人が少なくない。今回は、アフリカ人から見たカダフィ像を改めて浮き彫りにしてみたい。

毛沢東語録に匹敵する「グリーンブック」

 「毛沢東語録を知っているでしょう? あれに匹敵するのが、カダフィのグリーンブックなんですよ」と、上海を訪れていたアフリカ人のY氏は語る。Y氏は西アフリカの大学で教鞭を執っている。

 カダフィの最終目標は、リビア国内に「政府」を必要としない社会主義国家を建設することだった。「毛沢東語録が赤だったのに対し、彼のは緑。国民に所持が義務づけられていた」(同)という。

 「グリーンブック(緑の書)」には、彼の哲学が凝縮されていた。だが、結果的に多くの矛盾を生むことになった。