セネガル人、X氏の携帯電話が鳴る。アフリカからの国際電話だ。

 「今度、中国企業のA社がアフリカの○△共和国に現地法人を立ち上げる。中国語が話せるアフリカ人はいないか?」

 X氏は上海に出張に来ているビジネスマン。すかさず上海在住のアフリカ人ネットワークから適当な人材をかき集めようと動き出す。

 昨今、上海におけるアフリカ人のコミュニティーが拡大しているが、アフリカ大陸でも中国人が急増中だ。

 「中国人はアフリカ全土のどこにでもいるさ。石油、天然ガス、鉄鉱石などの資源を求めてやって来るんだ。資源を手に入れる交換条件として、タダでインフラを整備してくれる。中国企業の投資を歓迎するかって? 当然でしょう。何でもタダでやってくれるんだから、喜ばないわけがないじゃない」と、X氏は流暢な中国語で話す。

 中国政府が主導するアフリカ進出は「利益度外視」のケースが少なくない。アフリカでは、明らかに西洋のやり方とは違うこの中国方式が実は歓迎されている。

カダフィ政権崩壊で中国企業のリビア進出が頓挫

 国際ニュースに敏感な中国で、この時期もっぱら衆目を集めているのは、ポスト・カダフィ政権を巡るリビア情勢だ。

 OPEC(石油輸出国機構)によれば、リビアの石油埋蔵量は2010年末で471億バレル。世界の3.8%を占め、世界第7位にランキングされている。アフリカでは最大の埋蔵量である。

 リビアの輸出額のうち9割が石油の輸出で占める。年間の原油輸出額は422億ドルで、167カ国中19位だ。

 そのリビアで、中国企業は早くから経済活動を展開していた。「土木建設プロジェクトの請負」という形での進出が大きな割合を占める。本格的に進出した2007年以降、どんどん大型プロジェクトを受注するようになっていた。