麻生太郎首相の求心力低下が著しい。定額給付金の所得制限をめぐる発言はブレまくり、迷走の末に地方自治体へ責任を「丸投げ」した。漢字を読めない「KY」首相では威厳もなく、ついには失言も飛び出して陳謝する羽目に。内閣支持率は急落し、発足後わずか2カ月足らずで政権は既に末期症状の様相を呈している。(敬称略)

 11月17日のテレビ朝日報道によると、麻生内閣の支持率が29.6%(前月比13.2ポイント減)に急落する一方で、不支持率は46.8%(同9.5ポイント増)と激増。永田町の常識では、内閣支持率が3割を切れば「黄信号」、2割に届かないと「赤信号」と言われる。9月25日の内閣発足から2カ月もたたないうちに、国民は麻生に見切りをつけようとしている。なぜ、支持率はこうも急落したのか。

ホテルのバーは安全で安い所?

 そもそも、一流ホテルのバー通いを批判され、麻生が記者団に「逆切れ」して食ってかかったのが、イメージダウンの始まりだろう。あれでは記者団だけでなく、国民も引いてしまう。覆い隠されてきた麻生の真の「品性」をさらけ出してしまったからだ。

 首相官邸で麻生をインタビューする記者団の「ぶら下がり取材」は通常1日2回、昼と夜に行われる。テレビカメラは「昼なし、夜あり」というルールだ。レンズの前では努めてにこやかな顔を浮かべる麻生だが、それがなければ “営業用” の笑顔は必要ない。

 突然、麻生が逆切れしたのは、カメラ不在の10月22日昼。「連日の夜の会合が庶民感覚とかけ離れている」といった質問を受け、「たくさんの人と会う時に、ホテルのバーは安全で安い所だという意識が僕にはある」と説明。続けて、「例えば安い所に行ったとする。周りに30人からの新聞記者や警察官もいる。『営業妨害』って言われたら何と答える? 聞いてんだよ。答えろよ」といった口調で逆質問した。

 確かに、料亭よりホテルのバーは安いだろう。筆者は、首相が毎晩のようにホテルのバーに通うのはどうかと思うが、だからといって別にことさら問題にしようとは思わない。首相として自分の仕事さえきちんとやれば、一日の終わりに自分のカネでどこで飲もうが、目くじらを立てる必要はない。

「カップめんは1個400円くらい?」、麻生首相が答弁

「カップめんは1個400円くらい?」〔AFPBB News

 あくまで問題は、記者団に対するケンカ腰の態度。それはカメラなしでも活字で詳細に報じられ、テレビのワイドショーでも話題になった。記者団から嫌な質問を受けても、麻生は平然としてやんわりユーモアを交え、それに答えるぐらいの余裕を持つべきだったのだ。

 その後、麻生は居酒屋「北の家族」に出掛け、自民党が呼んだ大学生と一緒に鍋をつつき、パフォーマンスを演じた。麻生がいくら「庶民性」をアピールしようとしても、そんな嘘っぱちはすぐ見抜かれる。

 カップめんの値段を「400円」と国会答弁し、居酒屋で出された料理を「ホッケの煮付け」と紹介して「ホッケは焼くもの」と諭された麻生に、「庶民感覚」を認める国民はいない。麻生が居酒屋を1時間ほどで退出し、いつもの東京・虎ノ門のホテルオークラのバーへ直行した事実は、「首相は実は何も考えていないのではないか」と疑わせるのに十分だった。