2008年9月のリーマン・ショックを引き金にした世界金融危機で、自動車販売は世界的に落ち込んだ。その煽りを食って、青息吐息となっているのが自動車部品業界だ。自動車メーカー各社の在庫調整の完了した2009年春頃まで、生産ボリュームが例年の半分以下になったサプライヤーが珍しくなかった。

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AFPBB News

 部品メーカーに対しては、数カ月前に自動車メーカーから生産計画が提示されるのが通例だ。ところが、リーマン・ショック以降は、1カ月未満という非常に余裕のないタイミングで提示されるケースが相次ぎ、無駄な労力が増えた。

 中堅サプライヤーの経営者からは「自動車部品は最終製品ではないので、自前の努力で拡販することは不可能。自動車メーカーが計画通りに作ってくれないとどうしようもない」と、ボヤき声が上がっている。

 苦戦ぶりは、自動車部品工業会が12月11日に発表した「平成21年度中間期の自動部品工業の経営動向(PDF)」からも読み取ることができる。調査対象企業の83社の収益を合計すると、売上高は前年同期比33.7%減の7兆3992億円にとどまった。前年同期には5000億円を超えた営業利益が309億円の赤字に転落。当期利益は2786億円の黒字が1329億円の赤字に陥るという惨憺たる状況である。

 2009年度下期に新車販売が増加傾向に転じたことによって、サプライヤー各社は上期のマイナスを多少は埋め合わせできそうだ。通期の見通しは、売上高が前期比16.3%減、15兆9848億円とマイナスが避けられないものの、当初見通しを6283億円上回る。営業利益は前期の2倍以上の2351億円に拡大する。純利益は56億円の赤字だが、前期の4762億円の赤字よりも大幅改善となる。

 ただ、この回復が本物だと楽観するのはまだ早い。

国内縮小がビジネスモデルの前提

 部品工業会の信元久隆会長(曙ブレーキ工業社長)は会見で「本格回復については厳しく見ている。車両メーカーを含めて生産過剰への対応ができているとはまだ言いにくい」と述べ、気を抜くのは早いという緊張感を滲ませた。

 そもそも、下期の収益回復も、減税や補助金などの期間限定のインセンティブや、派遣社員の契約解除、設備投資抑制などの後ろ向きの努力を積み上げた結果であり、自動車業界の課題が根本的に解決されたわけではない。