内観をするということは、視点を上に持ち上げて、上から自分を見る練習をすることです。客観的な見方を強化することによって、認知の歪みを少しでも修正するわけです。
記憶が変わると人生が変わる
――内観によって内面に変化が起きるのは、なぜですか。
本山 視点を変えるからです。先ほども言ったように、誰もが自分だけの独自の認知をしています。それに対して、何をしてもらって、何をして返したのか、という客観的な事実だけを調べることで、客観的視点で事象を見ることができるようになります。
母親を恨んでいる人は、「してもらったこと」は、親として当たり前だという意識があることが多く、その事実を忘れたり無視しています。だから「意識化」といって、意識してその事実を探すんです。
母親が作ったご飯を食べることは簡単ですが、作る方は大変です。そうした事実が客観的に見えてきた時に、「記憶」が変わります。記憶が変われば、生き方が変わります。
――「して返したこと」があるのは、なぜですか。
本山 公平に見るためです。もちろん人は「してもらったこと」ばかりではなく、してあげたこともあるわけです。ギブ・アンド・テイクで生きていますから、その事実を公平に客観的に見るわけです。
――最初に母親を対象として思い出すのは、なぜですか。
本山 自分の本音が一番出るからです。他人に対しては格好をつけたり建前で接することがありますが、母親に対する自分の態度は、自分の本音だからです。小学校低学年から時系列的に母親との関係を見ていく時、偽りのない素の自分が客観的に見えてきます。