男子はケフレジギ 女子はツルが優勝、ニューヨークシティマラソン

色づく木々を背景に走るランナーたち(ニューヨークシティマラソン)〔AFPBB News

 なるほど、米国は多民族国家である。2009年で40回を迎えたニューヨークシティ(NYC)マラソンを走って、改めてそう思った。

 毎年11月に開かれるこの大会は、世界でも最大級の都市型マラソンである。今回の参加者は約4万4000人。日本からの参加は数百人だが、欧州、南米を中心に90カ国近くから多数のランナーがやって来る。フランス、イタリアは3500人以上が参加するし、スイス、北欧あるいはブラジル、アルゼンチンなどからのランナーも目立つ。国ごとにおそろいのTシャツを着たり、顔に国旗をペイントしたり。実に国際色豊かである。

 舞台装置がまた素晴らしい。スタート地点は軍事基地の横だけに、本物の大砲の音を合図に走り出す。200万人以上というコース沿道を埋める人の波。ランナーすべてに対する圧倒的な応援。小さな子どもたちも活躍する給水所。マンハッタンの超高層ビル街の遠望。ゴールとなるセントラルパークの黄葉・・・。

他民族国家に求心力もたらすお祭り

男子はケフレジギ 女子はツルが優勝、ニューヨークシティマラソン

お祭り気分でマラソンをエンジョイ!(ニューヨークシティマラソン)〔AFPBB News

 完走後、ホテルまで歩いていく間にすれ違う人たちが「コングラチュレーション!」と声をかけてくれるのも嬉しい。「いつもは意地悪で冷たいニューヨーカーが、この日ばかりは優しくなる」。NYC在住の知人がそう言った。

 大会の素晴らしさと同時に、走っていて気がつくのは、通過する街の印象が地区ごとで大きく変わることだ。やはり移民で構成される国である。どこが母国か、で街の風景が違うのだろう。応援するにも、星条旗ではなくそれぞれの故郷の国旗を掲げる。母国のランナーが通れば、それこそ大声援だ。

ニューヨークマラソンで激走(?)する筆者

 そうか、多民族であるがゆえに本来なら遠心力が働いてしまう社会に、どう求心力を持たせるか。合衆国である米国は、国家としての「ユナイテッド(統合)」が建国以来の最大のテーマだったし、これからもそうだろう。「政治」の側は常にそのことに腐心している。具体策も用意する。NYCマラソンも統合を維持・発展させるための大きな祭りの一つなのか。走りながら、頭の片隅でそんなことを思った。