国際会計基準審議会(IASB)が会計基準の抜本的な見直し作業を進めている。
教訓としているのは無論、2008年9月のリーマン・ショック。デリバディブ(金融派生商品)取引で好き勝手に未実現利益が計上され、レバレッジが過大になった反省を踏まえ、「公正価値」による評価を一段と推進するのが主眼である。大雑把に言えば、その時々で変動する「時価」で評価する範囲を拡大しようという考え方だ。
それによると、「短期的な価格変動の影響を受けないもの」として区分される資産は大変厳しく限定される。金融界において最も話題を呼んでいるのは、長期保有目的の株式の配当や売却による収入が「その他包括的利益(OCI)」に計上され、当期純利益に計上できなくなることである。
さすがに邦銀などが強力に巻き返しを図り、配当については何とか当期純利益に計上される方向で議論が修正されつつある。
しかし、優良企業の創生期に引き受け、そのまま保有しているような「おいしい」株式の含み益に関しては、売却して利益を実現しても当期利益には計上できそうにない。
利益計上したければ、その保有株式を毎期の決算で時価に洗い替えする必要がある。だが、この変動の大きい株式相場の下では、収支が赤字と黒字をジェットコースターのように上下することを覚悟しなければならない。そんな中で大きな赤字が出た時、各種規制に堪え得るほどの自己資本の厚みを邦銀は持っていない。