2007年10月、上海の株式市場は上海総合株価指数が6124ポイントという史上最高の水準を記録した。日本でも中国株の投資はブームとなった。本屋に行けば「中国株で儲けよう」といった書籍があふれ、証券会社は投資家に対して「2008年はオリンピックの年だから中国株はもっともっと上がるだろう」と煽っていた。
しかし、今年に入ってから中国株は突如として急落。11月現在、昨年の10月に比べて上海株は70%も下落した。内外の投資家は期待を完全に裏切られ、途方に暮れている。なぜ、有望視されている中国の株式市場がここまで収縮してしまったのだろうか。
ギャンブル同然の株式市場
中国の政府系シンクタンクである国務院発展研究センターのエコノミスト、呉敬蓮氏は、「現在の株式市場はギャンブルそのものだ」と、中国の株式市場を一貫して否定的に見ている。
一般的に株式投資は銀行預金とは異なり、ハイリスク・ハイリターンの投資であるため、どの国の株式市場でも投機的な要素は含まれているものだ。そうした中で投資家の投資行動が短期的かつ投機的にならないように、市場の透明性を高め、配当を強化するなど、株式の長期保有のメリットを強化する必要がある。
だが中国の株式市場は現状において市場の透明性が低く、株式の配当も十分に行われていないなど、投資家にとって株式を長期保有するメリットはほとんどない。
投資家の構成も、株式市場を不安定化させる要因となっている。構成を見ると、97%は個人投資家である。その中で大きなウェイトを占めるのが定年退職者だ。機関投資家の不在は株式市場の不安定性をもたらしている。
つまり、個人投資家の多くは企業の業績などファンダメンタルズの情報分析をほとんどせず、日々の株価の動きを見ながら投資を行っている。したがって、ちょっとした噂とデマで「売り」または「買い」が殺到してしまいがちなのだ。
また、現行のルールではフェアの原則が徹底されていない。証券会社の窓口を覗いてみれば分かるが、大口投資家と小口の個人投資家の取り扱いはまったく異なっている。小口の個人投資家は証券会社の1階のホールで取引を行うのに対して、大口投資家は2階以上のVIPルームで取引を行う。証券会社は多くの取引手数料を落としてくれる大口投資家を優遇し、様々な情報を提供する。その結果、株式市場は大口投資家による株価操作が行われやすく、実際にも横行している。
さらに、投資家の中には許認可権を持つ国家幹部(公務員)も多く含まれている。規定では、国家幹部は株式投資を行ってはならないとされているが、実際は国家幹部の多くは株式投資を行っており、インサイダー取引の疑いがある。結局、政策にかかわる情報をいち早く入手した者にとって有利な市場になっており、個人投資家は損を被る構造になっている。疑心暗鬼の個人投資家はちょっとした値動きがあったらすぐに売りまたは買いに走り、市場は極端に不安定化している。