前回まで、本流トヨタ方式の「人間性尊重」について8項目に分けて説明してきました。ご理解いただけたでしょうか。
今回は、この「人間性尊重」を生かして部下に仕事を与える方法を考えてみましょう。
筆者はその方法を、「部下を信じ、チームにストレッチ目標を与えよ」という言葉で言い表しています。
まず、「作業」を指示することと、「仕事」を指示することの違いを考えてみましょう。
筆者は「仕事」から「考えること」を除いたものを「作業」と考えています。上司が部下を信用できない時は、「箸の上げ下ろし」まで、事細かに指示する「作業」をやらせることになります。部下は、このように指示されると、長く続けていれば動作は速くなるかもしれません。しかし、考えることがほとんどないので、ノウハウは身につきません。
一方、「部下を信じ」という言葉の意味するものは、部下に権限を委譲し「仕事」として与えよということです。
具体的に言うと、部下に五官を使って対象物を把握してもらい、部下自身の頭で考えさせて、決断し、実施して、結果を反省するといういわゆる「PDCA」の管理のサイクルを回して、思う存分に働いてもらうということです。
この管理のサイクルを1回、回すごとに、人は達成感を味わいながら成長するのです。
チームで課題に取り組むことのメリット
個人には能力の差もあれば、得手不得手もあります。よって、個人単位にテーマを与えると、不得手な場面で仕事が渋滞し、全体効率が落ちてしまいます。そのことを避けるために「チームに」テーマを与えます。
なぜチームなのかを説明しましょう。
上司と部下は、職位の差と同時に、年齢差もあります。上司が絶対優位な状況の中では、上司に一方的にやり込められやすいのです。これを解決するために、複数の人間でチームを構成させ、上司とディスカッションさせれば、上司の絶対優位性を緩和することができます。
このチームの構成人数ですが、3人にすると、いつも誰かが仲裁役に回って議論がかみ合っていくことが期待できます。よく「3人寄れば文殊の知恵」と言いますが、確かに筆者の経験からも、3人それぞれにテーマを与え、いつもその3人でチームを組んで助け合いながら取り組むようにした時が、一番効率が良かった覚えがあります。