郵政民営化を断行した小泉元首相(参考写真)〔AFPBB News〕
残り1164文字
小泉純一郎首相は「郵政民営化、是か非か」に争点を絞り込んだ2005年の総選挙で圧勝を収め、郵政民営化関連法を成立させた。2007年10月に民営化は実現し、日本郵政グループが発足。クジラは池に放たれ、他の魚と一緒に泳ぎ始めた。
その際、前述した郵便貯金法が廃止され、民営化後に集めた預金からは「政府保証」が外された。つまり、民間の銀行と同じ扱いになり、ゆうちょ銀行は預金保険機構に保険料を納め、ペイオフ制度(万一破綻した場合に預金者の決済用預金全額及び普通・定期預金の元本1000万円までとその利子を保護)が適用された。
ただし、日本郵政公社が解散する時点で保有していた定額貯金など定期性預金は独立行政法人の郵便貯金・簡易生命保険管理機構が引き継ぎ、満期を迎えるまで「政府保証」が維持されている。
郵貯の預け入れ限度額は1000万円であり、預金者にとっては1000万円まで保護してくれる主体が政府でも預金保険機構でも構わないかもしれない。
「政府保証」外しに執着した財務省の真意とは・・・
「政府保証」外しに執着した財務省
しかし関係者によると、財務省は郵貯から「政府保証」を外すことに執着した。政府保証付き郵貯を「偶発債務」と考えていたからだ。「国の借金」に直接カウントされなくても、「簿外債務」と市場から見なされれば、財政赤字が雪ダルマ式に拡大する中で長期金利が急騰しかねないと危惧したのだろう。
財務省の懸念を示す1つの資料がある。同省の「公的債務管理政策に関する研究会」が2003年11月にまとめた報告書である。
報告書は「政府保証付の金融商品が提供されていることによって、家計や金融市場の資金配分を歪めているのではないか、という意見が多かった」と率直に懸念を示している。
その上で、「郵貯・簡保は、現状、政府保証が付されていることに鑑み、偶発債務のリスクが拡大し、または顕在化することのないよう、リスク管理や事業運営を適切に行うべきである」と提言しているのだ。
また、報告書は「更に、郵貯・簡保は、大量の国債を保有する巨大な市場参加者であることから、その運用姿勢が金融市場に攪乱的影響を及ぼさないよう努めるべきである。これらの点は、経営形態の移行期においても十分留意すべきである」と指摘した。池に放たれてからも、クジラが暴れないようクギを刺していたわけだ。
そして財務省の思惑通り2007年の郵政民営化と同時に、新規受け入れ預金から「政府保証」が外れた。