為替市場では、ドル安基調が継続中。ユーロ/ドル相場は21日のロンドン市場から、節目とみられてきた1ユーロ=1.50ドル台に乗せて推移する時間が長くなっている。「ユーロ高ドル安→原油高」という近年の図式通り、原油先物が為替の動きを足場に急伸。21日には一時、1バレル=82.00ドルをつけた。
ユーロ高が一方的に進行していることは、言うまでもなく、ドイツをはじめとするユーロ圏諸国の輸出を圧迫する要因であり、域内経済全体の回復を阻害する。また、ユーロ高が一段と進行すると、域内の物価を下押しする要因となる。ユーロ圏のHICPコア(エネルギー・食品・アルコール・たばこを除く総合)は、直近9月分ですでに前年同月比+1.2%まで鈍化してきている。欧州中央銀行(ECB)は10月の月報で、エネルギーと食品を除くベースのHICPが2008年半ばからダウントレンドにあって、近く反転する兆しが見られていない主因は、賃金抑制などから域内需要が弱まったことだという指摘を行った。そうした要因からのインフレ率下押し圧力が今後も続いていくところに、ユーロ高の影響が上乗せされてくるわけである。
一方で、原油価格の上昇から総合ベースのHICPが上昇率を加速する場合には、インフレ期待の上昇をECBとしても警戒せざるを得なくなるわけで、その場合、金融政策運営は大きなジレンマに陥ってしまう。すなわち、域内景気悪化や金融システム問題への対応を優先して金融緩和を続けるか、それともインフレファイターとしての存在意義を優先して金融引き締めに舵を切るかという、究極の選択である。