さきの総選挙で圧勝、政権交代を勝ち取った民主党は「製造業の派遣労働禁止」を打ち出している。
2008年9月のリーマン・ショックに端を発した世界同時不況で、製造業の派遣切りが社会問題化したのは記憶に新しい。年末に繰り返しテレビに映し出された日比谷公園の「年越し派遣村」の映像に、「明日は我が身」と寒々しい思いをした人も少なくないだろう。
しかし、派遣労働者はむしろ非製造業に多い。「ハケン」のごく一部に過ぎない製造業派遣労働のみを禁じても、問題の根本的な解決にはならない。非製造業でも、多くの派遣労働者が劣悪な労働条件で働いている現実を受け止め、その労働環境を改善することが先ではないのか。
あるツアコンの長い1日
「お客さまにお知らせいたします。10時40分大阪発フランクフルト行きは機材故障のためフライトがキャンセルされました」
2008年10月17日午前、関西空港の出発ロビーに突然流れたアナウンスにツアーコンダクターの浅井知子(仮名、37)は愕然とした。JTBが企画した「中欧3カ国8日間」の添乗員として、参加者28人の出国手続きを終え、ゲート前で点呼をかけようとしていたところだった。
「今日中に出発できるだろうか?」「到着後の現地日程の変更は必要か?」と様々な心配ごとが頭をよぎったが、幸いなことに、航空会社がすぐに代替便として「成田発パリ行き、エールフランス最終便」を手配してくれた。「とりあえず、最悪の事態は回避できた」と、ホッとしたものの、それが浅井の長い、長い1日の始まりだった。