厚切りのこんがり焼けたトーストに、これまたちょっと多めのバターをのせる。トーストの上に、熱でじんわり溶けたバターが広がっていく。非常にシンプルで、毎日食べても飽きない定番バタートーストだ。
このバター、作り方も至ってシンプルなのはご存じだろうか。
搾ったままの牛乳を放置しておくと、生クリームが分離して浮かんでくる。この生クリームを攪拌すると脂肪分が凝固する。それが出来立ての「無塩バター」なのだ。さらに練って水分を抜いた後、塩を加えると市販しているものと同じバターの完成となる。
実は私も何度か自宅でバターを手作りしてみた経験がある。脂肪分の高い純正生クリームをビンに入れシャカシャカと振ること約10分。それだけで新鮮なバターができるのだ。コスト的には非常に割高なバターになってしまうが、嫌な香りもしないし、食べた後もさらっとしている。フレッシュな風味と味わいは市販のバターとは比べ物にならないほどおいしい。
いつもこのバターが食べたいなら、純正の生クリームを買ってきて手作りしなくてはいけない・・・、と思っていたのだが、福島の乳業メーカーが作っている、今までに味わったことのないおいしいバターを見つけた。
フレンチのプロが絶賛
「危険な温度帯が非常に少ないバターだ!」
福井県鯖江市にあるサバエ・シティーホテルの総料理長でフランス料理シェフの藤井正和氏は、酪王乳業(福島県郡山市)の「酪王フレッシュバター」をそう評した(藤井氏は、ドイツ・ベルリンで開催された世界料理オリンピックに日本代表として出場し、銅メダルに輝いたという経歴を持つ業界では有名な人気シェフの1人だ)。
バターというのは常温に戻ると、特有の「嫌味」が出てくるそうだ。それが藤井シェフの言う「危険な温度帯」。ところがこの酪王のバターはその「嫌味」が少ない。つまり、レストランで提供した時、お客様のテーブルの上でも長くおいしい味を保ってくれるというわけだ。
レストランのコース料理で提供されるバター。それは料理の中にあっては陰で支える部分かもしれないが、なぜか印象に残る。溶けかけて風味の悪くなったバターを食べた時の後口(あとくち)の悪さを経験したことのある人も多いだろう。
藤井シェフも納得のいくバターが手に入らない場合は、フランス料理でありながら、パンに添えるバターをお客様に出していなかったという。
それがこのバターと出合ってから、ディナーのテーブルからバターが消えることはなくなった。それも申し訳程度の薄さではなく、かなりたっぷりの量を出している。おいしいバターをたっぷり味わってほしいというシェフの自信の表れだ。