はじめに

 新大綱の特色は、いわゆる動的防衛力構想と防衛体制の空白域である南西諸島シフトである。昨年末に発表された新大綱における南西諸島防衛作戦を瞥見し、その課題等を検証したい。

1 防衛計画大綱等における島嶼防衛に関する記載事項

 新大綱においては、「V 防衛力の在り方」において、次のような記述がある。

●1 防衛力の役割 (1)実効的な抑止及び対処 イ―島嶼部に対する攻撃への対応

 島嶼部への攻撃に対しては、機動運用可能な部隊を迅速に展開し、平素から配置している部隊と協力して侵略を阻止・排除する。その際、巡航ミサイル対処を含め島嶼周辺における防空態勢を確立するとともに、周辺海空域における航空優勢及び海上輸送路の安全を確保する。

●3 自衛隊の体制 (2)体制整備に当たっての重視事項 イ―島嶼部における対応能力の強化

 自衛隊配備の空白地域となっている島嶼部について、必要最小限の部隊を新たに配備するとともに、部隊が活動を行う際の拠点、機動力、輸送能力及び実効的な対処能力整備することにより、島嶼部への攻撃に対する対応や周辺海空域の安全確保に関する能力を強化する。

●3自衛隊の体制 (3)各自衛隊の体制 ア―陸上自衛隊 (ア)

 (略)この際、自衛隊配備の空白地域となっている島嶼部の防衛についても重視するとともに、部隊の編成及び人的構成を見直し、効率化・合理化を徹底する。

 云うまでもなく、島嶼部への攻撃に対しては、起動運用可能な部隊を迅速に展開し、平素から配置している部隊と協力して侵略を阻止・排除することとなる。

 新大綱では保有すべき防衛力の役割、機能、部隊の種別等が具体的に述べられ、その編成、装備等の具体的規模が別表で示されている。各自衛隊の体制について別表で変更された部分を参考までに示す。

陸上自衛隊

●編成定数:15万5000人から15万4000人に削減
●常備自衛官定員:14万8000人から14万7000人に削減
●地対空誘導弾部隊:8個高射特科群/連隊から7個高射特科群/連隊に削減
● 戦車:約600両を約400両に削減
●火砲:約600門/両を約400門/両に削減

海上自衛隊

●護衛艦部隊(地域配備):5個護衛隊から4個護衛隊に削減
●護衛艦:47隻から48隻に増加
●潜水艦:16隻から22隻に増加

航空自衛隊

●航空警戒管制部隊:8個警戒群から4個警戒群に削減
●航空警戒管制部隊:20個警戒隊から24個警戒隊に増加
●作戦用航空機:約350機から約340機に削減

弾道ミサイル防衛にも使用し得る主要装備・基幹部隊

●イージス・システム搭載護衛艦:4隻から6隻に増加
●地対空誘導弾部隊:3個高射群から6個高射群に増加

 これらを具体化した中期防衛力整備計画においては、「島嶼部に対する攻撃への対応」の具体的な事業として次のようなものが示されている。

情報収集・警戒監視体制の整備等

●陸自の沿岸監視部隊の配備
●初動担任部隊の新編事業着手
●移動警戒レーダーの配備
●早期警戒機の整備基盤の整備

迅速な展開・対応能力の向上

●輸送ヘリ(Ch‐47J)の整備
●現有輸送機の後継の整備
●ヘリ搭載護衛艦(DDH)の整備
●地対空誘導弾の整備
●島嶼部への機動展開訓練

防空能力の向上

●那覇基地の戦闘機部隊を2個飛行隊に
●F‐4の後継機の整備
●F‐15の改修・自己防御能力向上
●F‐15に電子戦能力付与
●F‐2の滞空能力やネットワーク機能の向上
●UH‐60Jの後継機の新たな救難ヘリの整備
●C‐130救難ヘリに対する空中給油機能の付加

海上交通の安全確保

●DDH、DD、潜水艦、及びP‐1の整備
●既存の護衛艦、潜水艦、P‐3Cの延命
●SH‐60K、掃海艦艇、掃海・輸送ヘリの整備
●哨戒ヘリ(SH‐60J)の延命
●救難飛行艇(US‐2)の整備