「これから先、紙の本を買うことはないと思います。最近は読みそうもない本もついネット上で買ってしまい、電子本棚に並べています」
米国東海岸バージニア州に住む30代女性のシェロッドさんは「アイパッド(iPad)はもう手放せない」と言い切る。
紙と電子書籍の売り上げが逆転したアマゾン
英語版アマゾンの書籍売り上げは、すでに紙の本と電子書籍が逆転した。昨年7月、ハードカバー(単行本)部門で、電子書籍の販売数が紙を抜いた。今年に入り、比較的安価なペーパーバック(文庫本)部門でも同じ現象が起きた。
アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は今年5月、「消費者は今、紙の本より電子書籍の方を選択するようになりました。以前から『いずれはこの日が来る』という希望を抱いていましたが、こんなに早く望みが叶うとは思っていませんでした」と述べ、電子書籍の急伸スピードに驚きを隠さない。
それだけではない。2010年のアマゾンの売上高(書籍と関連商品を含む)は前年比40%増の342億ドル(約2兆7000億円)で、日本の出版関係者は羨むばかりである。
実は電子書籍市場において、日本は2003年頃からソニーや松下電器(現パナソニック)などが本格参入して世界的な主導役を担ってきた。だが、2008年頃には端末生産を打ち切って撤退している。
こうした苦い経験を生かして、近年になって日本市場も急成長するかに見えるが、6月は電子リーダーの売り上げがむしろ減少し、日米差は縮まるどころか逆に広がっている。
日本市場の伸び悩みもさることながら、米国の電子書籍市場の潜在力はどこにあるのか。
メーカーが市場開拓の牽引役になっていることは当然として、利用者側の積極的な電子書籍の活用法に日米で大きな差がある。
好例がある。それはペーパーレスの象徴的な出来事だった。