国際通貨基金(IMF)が4月に発表した世界経済見通しによると、中国の国内総生産(GDP)が2010年に日本を追い抜き、世界第2位になるという。いや、もっと早いのではないか、という説もある。2009年版・通商白書は、「中国が年率8%の成長を遂げ、日本の成長率が前年比マイナス3.5%以下になった場合」は、今年中に日中逆転が起こる可能性があると推測している。

 いずれにしても1968年に日本の国民総生産(GNP)が旧西独を上回って以来、日本が40年余にわたって守り続けてきた「世界第2位の経済大国」という地位を、間もなく失うことは間違いない。

中国を抜きにして語れない日本経済

上海の繁華街・外灘地区で男性が焼身自殺 新華社通信

中国の成長の象徴・上海〔AFPBB News

 そもそも、日中逆転がいつ起きるかにかかわらず、中国を抜きに日本経済の行方を語ることは最早できない。例えば、財務省が発表する貿易統計を見てみよう。2009年1~6月の輸出入を合計した日本全体の貿易額に占める対中国のシェアは20.4%に達した。もちろん国別では1位だ。

 これに対し、かつては日本の経済成長の牽引車であったはずの米国はいまや13.7%にとどまる。中国に香港、台湾、シンガポールなどを加えた「大中華圏で見ると、そのシェアは30%を超す」と日本総合研究所会長の寺島実郎氏は指摘する。

 「これからはアジア最大の経済大国となる中国を、日本が支えていかなければならない。米欧の2極に対抗し、アジアの極を作っていくにはその道しかない」。日中のGDP逆転で偏狭なナショナリズムが再び高まることを心配しながら、国際経済問題に長年関わっている経済官僚OBはこう言った。

 しかし、その中国も、国内の経済格差に苦しんでいる。沿海部と内陸部、都市と農村、都市間、さらには都市内部の労働者の間で、経済発展とともに所得格差が広がっている。

ウイグル暴動の死者156人に、西部カシュガルでも暴動の動き

2009年7月、新疆ウイグル自治区では大規模な暴動が発生、多数の死者が出た(区都ウルムチ)〔AFPBB News

 富裕層の多い上海では、プールつきの邸宅で高級車を乗り回す富豪がいくらでもいると言われているのに、1人当たりの耕地面積が小さい農村部では、都市へ出稼ぎに出ても食いつなぐのもやっとだ。

 この2月、温家宝首相もインターネットを通じた国民対話で「我々は貧富格差の問題の解決を非常に重視している」と宣言した。それにもかかわらず、7月の伊・ラクイラでの主要国首脳会議(サミット)に照準を合わせるように、新疆ウイグル自治区では暴動が勃発した。その背景には民族問題ばかりか、経済格差へのやり場の無い不満もあったことは間違いない。