日銀は10月31日に開催した金融政策決定会合で、0.2%利下げ(無担保コール翌日物誘導水準の「0.3%前後」への引き下げ)を決定した。票決は賛成4・反対4の同数で、議長(白川総裁)が決定を下した(反対したのは、須田、水野、中村、亀崎の4審議委員)。
また、補完貸付の基準貸付利率(ロンバート金利)は0.75%から0.5%へと、0.25%引き下げられた(全員一致)。

 一方、日銀当座預金のうち超過準備に利息を付す措置(「補完当座預金制度」)が、11 月積み期間から2009年3月積み期間までの臨時措置として導入された。適用利率は0.1%となった(全員一致)。
以上を総合すると、翌日物金利誘導水準0.3%をはさんで、上下に0.2%という同幅で、市場金利のシーリングとフロアが設定された形である。

 円高・株安の急進行で景気後退が深まるリスクが増大したこと、国際協調姿勢を示す上で日銀の利下げは意味があるとした与謝野経済財政相発言、「日銀が0.25%利下げを検討」とした日経新聞29日報道と金融市場での利下げ織り込み進展、政府が30日に追加経済対策「生活対策」を決定したこと、そして9月全国CPIコアの前年同月比プラス幅縮小。利下げ論から何とか距離を置こうとしてきた日銀は、急激な円高・株安の進行によって一気に「外堀」のみならず「内堀」までも埋められて、もはや「落城寸前」の状態になっていた感がある。日経報道にやや懐疑的な報道をしていた新聞も、31日朝の段階では、利下げの公算と明記していた。それでも、議長案(利下げ)への反対票が過去最高の4つも入った。日銀がこれまで掲げてきたロジックとの整合性を重視した審議委員が、意地を見せた形である。

 今回の決定は、国際協調の観点などから政治的にもはや回避できなくなっていた利下げを議長裁決という最終手段で決定する一方、超過準備への付利措置を導入することによって、このままゼロ金利政策にまで追い込まれることにはならないという点についても足場を固める、白川総裁率いる日銀執行部として、ぎりぎりの選択だったと言うことができるだろう。

 したがって、今回の措置を見る限り、今回の日銀の利下げに、いわゆる「残余感」はない。超過準備に付利する措置を導入したことで、この先の金融緩和は「プラス金利付きの量的緩和」、すなわち金融市場の機能麻痺につながりかねないゼロ金利政策は回避しながら、大量の流動性供給を可能にする仕組みが軸になることが明らかになった。しかも、この超過準備への付利は、臨時措置という位置付けになっている。金融市場が不安定なままである場合、2009年3月積み期を越えて、この措置が延長され、「プラス金利付きの量的緩和」が継続されるだろう。一方、金融市場が安定感を取り戻す場合には、付利措置をなくして、翌日物0.5%水準への0.2%利上げのタイミングを慎重に探っていくことになるのだろう。