民主党が衆院選マニフェスト(政権公約)を発表した。2009年8月30日の衆院選で政権交代が実現すれば、政権与党の公約となるだけに注目度は極めて高い。果たして鳩山政権は、官僚支配の政治を政治家主導に転換できるのか。「言うは易く、行うは難し」といったところだろう。公約実現に向け、政権のキーパーソンは誰になるのか。今、最も注目されているのは、鳩山由紀夫代表側近の平野博文役員室長と、首相官邸入りが取り沙汰される藤井裕久最高顧問である。(敬称略)
平野博文は衆院大阪11区選出、当選4回。松下電器産業(現パナソニック)労組、議員秘書出身の中堅議員で、「鳩山側近3人衆」の1人として知られる。他の2人は小沢鋭仁(山梨1区、当選5回)、松野頼久(熊本1区、当選3回)だが、今や平野は鳩山の最も信頼する側近ナンバーワンの座を勝ち取り、政権誕生後は政務の官房副長官に就任する公算が大きい。
抜群の危機管理能力、不祥事に飛んで来る平野
小沢一郎代表―鳩山幹事長時代、平野は幹事長代理として鳩山を支えた。
役回りはもっぱら、コンプライアンス(法令順守)。民主党をいかにスキャンダルや不祥事から守るか。発覚した場合には、いかにダメージを最小限に抑えるか。情報開示はじめ迅速な対応や処理を迫られるから、常に平野は党内に睨みを利かす。不祥事が起これば、いつ如何なる時でも飛んで来る。党のいわゆる危機管理担当が、平野の仕事である。
「裏方」役に徹し、平野は「鳩山と党を守るためなら、何でもする」と仕えてきた。そして、党内情報は表も裏も知り尽くすようになった。
何かとテレビに出たがり、自己アピールに余念がない一部の政治家とは違う。出たがりではなく、むしろ目立つことが嫌いな方だ。裏方や縁の下の力持ちに徹することができる、最近では珍しい政治家なのだ。学生時代は空手に打ち込み、自他共に認める「武闘派」でもある。普段は穏やかな表情をしているが、いざ喧嘩になれば滅法強いタイプだ。
自称「鳩山の側用人」、小沢にも関西弁でズケズケ
2009年5月の民主党代表選。鳩山当選に向け、秘かに多数派工作などに動いていたのが平野だった。鳩山124票に対して岡田克也(現幹事長)は95票にとどまり、鳩山が勝利した。実は、平野は事前に120票は固いと読み切っていた。
新体制の人事では、鳩山から「側にいてくれ」と頼まれ、党役員室長に就任。自らを「鳩山の側用人や」と称している。コンプライアンスと危機管理の担当もそのまま。党内の不祥事に目を光らせ、代表側近として党内では一目置かれる存在となった。
もちろん、鳩山の発言にもチェックは厳しい。「余計なことは言わんでいいのに」。不用意な発言を鳩山に注意する。代表代行の小沢に対しても、「軽妙な関西弁で臆せずにズケズケものをしゃべれるのは平野ぐらい」(鳩山周辺)とされる。
鳩山政権構想について、鳩山とともに練りに錬ったのも平野だった。辣腕を振るえる首相側近として、政権交代後の官邸入りは間違いないだろう。既に平野の元には、財務省をはじめ各省庁の幹部が続々と訪れ、メディアの取材依頼も相次いでいる。
「霞が関の駆け込み寺」、藤井は事務副長官に就任?
「国の総予算207兆円を全面組み替え。税金のムダづかいと天下りを根絶します」。民主党のマニフェストにはこう書かれている。